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オレは、ソレがこの男が乗っていた車なのだと理解した。理解して、足元からせり上がる恐怖に、歯がガチガチと鳴り始める。
男へとライトを向けると、さっきよりも楽しそうに嗤う男がいた。足は曲がり、スーツは血で染まっている。
ここで、事故があった。男は、大怪我をして、それで――。
「なんで、どうしてその怪我で歩けるんだよ。歩けるような怪我じゃないだろ」
「アーア、見ツカッチャッタ……」
合成のような声がして、男はニタリと嗤った。ヤバい。ヤバい、ヤバい。ここから離れないと――!
オレはすぐに倒れたバイクを立たせて、走り出した。バイクに乗る時間すら惜しい。とにかく今は、あの男から離れないとっ――。
「うわっ」
走り出した直後、オレの足はナニかに引っ掛かり、盛大に転んだ。バイクも手元から離れ、オレは地面に強かに体を打ち付けた。
「いってぇ……」
オレは痛みに耐えながら立ち上がろうとして、動きを止めた。後ろではユラユラと男のライトが揺れている。早く逃げなきゃいけないのに、足が動かない。震える手で携帯のライトを足元にかざす。
「う、うわぁぁぁ!!!!!」
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