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side 大地
都心からバイクを走らせて約2時間。都内といっても都心から離れれば自然の残る風景が広がっている。流れる緑の風景を堪能していると目的地に着いた。木造平屋建てのどこにでもある住宅。オレは敷地内に入ると、邪魔にならなさそうな場所を選んでバイクを停める。
ヘルメットを取って外の空気を堪能した。風が吹き、左耳に付けたチェーンピアスが揺れる。オレは汗で張り付いた髪を掻きあげた。やっぱり緑が多い場所は空気がうまい。
空を見上げると晴天で雲1つなかった。快晴なのはいいが、真夏の直射日光は容赦なく照らしてくる。黒髪じゃなくてよかったな、と思いながら、バイクに積んでいたバックパックを担いだ。さてどうしようか、と辺りを見回していると、玄関が開いて家の中から女性が出てきた。
白のワンピース姿に、茶髪をゆるくパーマにして鎖骨くらい伸ばしている女性は、オレの姿を見ると目を輝かせた。
「大地くん!いらっしゃい」
「あぁ。今日はよろしくな」
「こちらこそだよ~。荷物は部屋に置いておくね」
女性――大学の友人である森陽菜は、オレから鞄を奪うように持つと、家の中へ消えていく。それなりに重いから自分で持っていこうと思ったのだが、いらない心配だったらしい。陽菜はすぐに戻ってきた。
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