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8月も後半になり、残る夏休みが半分となる頃だった。オレはバイトの合間にサークルへ顔を出しに大学の構内を歩いていた。昼前の構内は人がまばらで歩きやすい。
「あの……岩城大地くん、だよね。少しお願いがあるんだけど……いいかな?」
遠慮がちに掛けられた声に振り返れば、緊張した面持ちの女性が目に入った。どこかで見たことがあったかと考えていると、女性が先に口を開いた。
「ウチ、2年の森陽菜っていうんだけど、大地くんには2年前の入学式の時に道を教えてもらったことがあって、それで大地くんのことを知っていたの」
「入学式……道案内」
2年前の記憶を手繰りよせる。入学式で人がごった返す中、迷子の子供のようにきょろきょろと見回す姿が妹に似ていて思わず声を掛けたことを思い出した。
「あぁ、あの時の!」
「うん。そう!あの時はお世話になりました!」
ぺこりとお辞儀する陽菜に、気にするなと答える。
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