第三章 トンネル

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 それに、ここはトンネルの中。徒歩でいること事態もおかしい。もしかして、さっきの対向車線にいたバイクの運転手かと思ったが、バイクを引いてもいないし、あの時バイクのブレーキ音はオレのしかしていなかった。  壁に向かっていったのに、ぶつかる音もしなかったのだから、バイクは走り去ったのかもしれない。だからさっきのバイクの運転手ではないだろう。  じゃあ車かといえば、車のエンジン音はトンネルに入ってから一切聞いてない。男は何でここまで来たのだろうか。ここがどの辺りかは把握しきれていないが、トンネルの半分は過ぎている。徒歩でトンネルを通過するなんて聞いたことがない。  何故、周囲ではなく自分をライトで照らしているのかもわからない。  肝試しのおどかし役のような恰好になっているのが不気味さを際立たせるし、何よりずっと黙ってる男に違和感がする。このままでいるわけにもいかない。オレは男に声を掛けてみることにした。 「あの、オレと同じくらいの男を見ませんでした?」 「……」  男は答えない。虚ろな瞳で見つめてくるだけ。オレは居心地が悪くなって、ゆっくりと立ち上がり、1歩後ろへ下がって男と距離をとる。  荒くなっていた息はいつの間にか整い、いつもの調子を取り戻し始めていた。
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