第三章 トンネル

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「オレ、相棒と一緒にいたんですけどはぐれてしまって……。このトンネル、照明消えちゃって困りますよね。どこかに連絡した方がいいんですかねー」 「……」  やはり男は答えない。携帯のライトを足元に降ろした男の顔は見えなくなった。  オレはポケットに入れていた携帯の存在を思い出し、取り出してライトを点ける。心もとないが、ないよりはマシだ。失礼にならない程度に男の方へ携帯を向けると、光から逃げるように動いた。  光が眩しかったのかもしれない。オレは、すみません、と小さく謝って、男と同じように近くの足元を照らすことにした。もしかしたら、オレと同じように急に照明が消えて困って他の人間を探していたのかもしれない。  ものすごい人見知りとか、そういう感じなのだろう。そうだとしたら、あまり話かけるのも悪いかもしれない。 「うわ、圏外か……」  電話をする、という手段をすっかり忘れていたオレは携帯を操作するも、画面右上には「圏外」の2文字が。  トンネルの中は電波が悪いのだろうと言い聞かせた。前にも同じようなことがあった気がするが、今は思い出したくない。認めてしまったら今度こそ立っていられなくなりそうだ。  オレは軽く頭を振って、男の方へ向き直った。
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