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コツコツという音を鳴らしながらイリュードさんは、奥の部屋に進んでいく。
次の場所は最初の場所から見えていたよりずっと広い空間だった。
「ここがメインのリビングです。それぞれが好きな様に、ゆっくり休息する場所ですね」
俺はリビングを見回した。
部屋の半分くらいの所で床の高さが変わっていて、高い方には柔らかそうな横長椅子が置いてあり、その周りはビッシリ本で埋め尽くされている。
この部屋にも全体的にふかふかの布が敷いてあった。
「共有スペースなので、ソファも本棚も自由に使ってください」
俺は近くにあった本を手に取ってめくってみる。
何が書いてあるかはサッパリだが、◯に/が突き刺さったような記号だけは何故か印象に残った。
本棚を辿り途切れた先、部屋の最奥には扉があり、どこかの部屋に行く道に繋がっているようだ。
「この場所は私も結構、気に入っています」
入り口からは見えなかったが、長椅子の向かいの壁の中では、炎が赤く揺らめきながら燃えていた。
その静かで力強い光の揺らぎは、何故かとても俺の心を落ち着かせ、目が離せなくなるほどだった。
「気になりますか? それは暖炉というものです」
「……ダンロ?」
「はい。炎を利用して部屋を暖める道具です。
本来は薪や炭など木を原料とした燃料を使うのですが、それだと環境に良くないので、私は魔法を使うようにしています」
イリュードさんは暖炉の近くに置いてある、三角形に整えられた黒い塊を取った。
「これは100%魔力で出来た魔炭という魔法道具の1つです。暖炉意外にも使えますが、魔炭の中にある魔力が尽きるまでは燃え続けてくれます」
イリュードさんが黒い塊をコロンっと投げ入れると、ボワッと炎が大きくなった。
その炎の姿を見て、俺はまたワクワクを感じた。
「俺もやっていいですか」
「はい、もちろん」
俺はダンロの隣に積み上がっていた魔炭を1つ取り、そのまま炎の中に手を突っ込んだ。
「あ……それは流石に熱いと思いますよ」
ジュッ
「……ッ!」
俺は衝撃に驚いて、反射的にすぐ手を引いた。
手には少しヒリヒリとする感触が残った。
「大丈夫ですか? 手を見せてください」
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