第1章 Level.0の冒険者

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コツコツという音を鳴らしながらイリュードさんは、奥の部屋に進んでいく。 次の場所は最初の場所から見えていたよりずっと広い空間だった。 「ここがメインのリビングです。それぞれが好きな様に、ゆっくり休息する場所ですね」 俺はリビングを見回した。 部屋の半分くらいの所で床の高さが変わっていて、高い方には柔らかそうな横長椅子が置いてあり、その周りはビッシリ本で埋め尽くされている。 この部屋にも全体的にふかふかの布が敷いてあった。 「共有スペースなので、ソファも本棚も自由に使ってください」 俺は近くにあった本を手に取ってめくってみる。 何が書いてあるかはサッパリだが、◯に/が突き刺さったような記号だけは何故か印象に残った。 本棚を辿り途切れた先、部屋の最奥には扉があり、どこかの部屋に行く道に繋がっているようだ。 「この場所は私も結構、気に入っています」 入り口からは見えなかったが、長椅子の向かいの壁の中では、炎が赤く揺らめきながら燃えていた。 その静かで力強い光の揺らぎは、何故かとても俺の心を落ち着かせ、目が離せなくなるほどだった。 「気になりますか? それは暖炉というものです」 「……ダンロ?」 「はい。炎を利用して部屋を暖める道具です。 本来は薪や炭など木を原料とした燃料を使うのですが、それだと環境に良くないので、私は魔法を使うようにしています」 イリュードさんは暖炉の近くに置いてある、三角形に整えられた黒い塊を取った。 「これは100%魔力で出来た魔炭(マカロ)という魔法道具の1つです。暖炉意外にも使えますが、魔炭の中にある魔力が尽きるまでは燃え続けてくれます」 イリュードさんが黒い塊をコロンっと投げ入れると、ボワッと炎が大きくなった。 その炎の姿を見て、俺はまたワクワクを感じた。 「俺もやっていいですか」 「はい、もちろん」 俺はダンロの隣に積み上がっていた魔炭を1つ取り、そのまま炎の中に手を突っ込んだ。 「あ……それは流石に熱いと思いますよ」 ジュッ 「……ッ!」 俺は衝撃に驚いて、反射的にすぐ手を引いた。 手には少しヒリヒリとする感触が残った。 「大丈夫ですか? 手を見せてください」
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