第0章 はじまりのはじまり

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ー《治安保全ギルド聴取室 》ー 「それで? 君は、なんで素っ裸でダンジョン前に立っていたの?」 腹が出すぎて服がはち切れてしまいそうな大男が、棒状の何かをトントンさせて言う。 後ろには同じ服装の細身の男が立っている。 「いや、だから、なんにも覚えてないんです。 なぜあの場所にいたのかも、自分が何者なのかも……」 「忘却魔法でもかけられたのか?」 「忘却魔法……?」 意味が分からないと言う顔をしていたら、大男は頭をポリポリ掻き 「まあ、ダンジョンに入ってたなら追い剥ぎに会うことも珍しくないし。 しかしなにも下着まで盗らなくてもいいのにな」 と言ってガハハッと笑った。 「……はぁ」 俺がそう答えると、大男は今度は自身の腕をトントンして言った。 「形式として身分を記録させて貰う決まりだから、冒険者タグ見して」 「……冒険者タグ?」 「え? 1番最初に腕に刻んでもらうでしょ?」 「……?」 「それも忘れちゃったの?」 「……分かりません」 大男はヤレヤレというように首を振り 「じゃあとりあえず腕見せて」 そう言われて俺は言われるがまま、両腕を大男の前に出して見せた。 「あれ、本当にないな……君、冒険者じゃないのにダンジョンに潜ったの?」 「……はぁ」 「それは自殺行為だな」 大男は一度フンッと息を吐き 「分かった。それじゃ、とりあえず君の事はギルド本部に報告するから」 と言うと何かを書き記した紙を2本の指で挟み、俺に渡してきた。 「ここを出たらすぐこの場所に行ってくれ」
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