第1章 Level.0の冒険者

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第1章 Level.0の冒険者

俺は大男から貰った地図を頼りに、ギルドとやらに辿り着いた。 道のものとはまた質の違う、整えられた白い石で出来た大きな建物だ。 木で出来た扉にはカラフルなガラスの窓が付いている。 扉の上には大きな看板で何か文字の様なものが書かれていた。 俺は扉を押して中に入った。 ギルドとやらの中はとても賑わっていた。 中央にある広場では同じ服装をした男女が円状の台に囲まれ、それぞれ別々の人々と忙しなく会話をしている。 その周りにはお店のようなものが立ち並び、 何かを飲んで騒ぐ髭の男たち。 物々交換する女たち。 鉄で出来た服を何度も着せ替える狼男。 など色々な人が交流していた。 暫く観察していると、ふと、俺はここに来て何をするかを聞き忘れた事に気付いた。 「俺、ここでなにすりゃいいんだ……?」 俺が途方に暮れ立ち尽くしていると、後ろから肩を叩く感触が。 「貴方がさっき連絡のあった、記憶喪失の冒険者さん?」 振り向いた先には尖り耳に眼鏡をかけた薄い金色のオカッパ髮の女性がいた。 彼女も円状の台に囲まれている人達と同じ、白い長袖シャツの上に黒い袖なし服を着けて、木の板を手に持っていた。 「……多分、そうです」 そう伝えると彼女は俺に右の掌を差し出した。 「はじめまして。私はモニア・アトランテ。 ギルド本部のオペレーターよ。主に新米冒険者さんたちの全般的なサポートをしてるわ」 「あ……えっと……」 俺が差し出された手にどう反応したらいいか分からず戸惑っていると、モニアさんは俺の掌を広げそこに彼女自身の掌を合わせ 「これがここの挨拶よ」 とこやかに笑った。 「早速だけど、タグの確認させてもらえる?」 俺は先程と同じように両腕を見せた。 「あ、うん。腕以外の場所に印字している冒険者さんもいるから、全身チェックするね」 モニアさんが掌に念を込め始めると、途端に彼女の右手が緑の光で覆われた。 返事をする間もなくその手は近付き、ブーンという音を立て俺の全身を弄った。 「うん、やっぱり見当たらない」 モニアさんは指で眼鏡の横をトントンと数回叩くと、緑の光は眼鏡に吸い込まれていった。 「今貴方の冒険者タグをスキャンしてみたんだけど、やっぱりどこにもないみたい」 「……はぁ」 「名前で登録者情報を確認してみるから、貴方の名前を教えてもらえる?」 「名前……分かりません……」 「そっか、名前も覚えてないのね? うーん、相当強力な忘却魔法がかけられているのかしら」 アゴに手を当てて考え込むモニアさん。 「ちょっと失礼……」 モニアさんが今度は俺のおデコに指を当て何かを唱えた。 「ダメだ解けない……」 彼女はまた考え込んでしまった。 「うーん、この忘却魔法が解けそうな心当たりは1人しかいないんだけど…でもなぁ…あの人の力は極力借りたくないのよね……」 モニアさんはブツブツと何かを呟いているが、呪文ではなさそうだ。
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