第1章 Level.0の冒険者

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「ふふふ、それは私のことですか? モニアさん」 銀色の長髪男性が突然、モニアさんの肩越しから顔を出した。 モニアさんと同じ尖った耳をしている。 「ヒィッ!」 「おや、随分な反応ですね」 「す、すみません……少々寒気が……。高潔の氷帝がどうしてこちらにいらっしゃるんですか。まだ呼んでもいないのに……」 モニアさんは少しずつ男性から距離を取った。 「ふふふ、私の情報網を舐めて貰っては困りますよ」 姿勢を戻した銀髪の男性の顔の位置は俺の遥か上で、見上げなければならない程だった。 「ふーん、君が」 凍てつくような青い瞳が動いただけだが、一瞬にして周りの空気が凍る。 「はじめまして。私は最上級(ハイ)エルフのイリュード・クァルツォアルです」 イリュードと名乗るエルフはニコリとする。 それでも寒気は引かない。 「(イリュードさんは高潔の氷帝って呼ばれてて、大概の魔法なら使えるコワ……凄い人なんですよ。歯向かったら何されるかわからないから気を付けてね)」 あまりの寒さに動けないでいる俺に、モニアさんがボソッと耳打ちをしてきた。 「モニアさん、それは私に対する挑戦状、と捉えてもいいですか」 「き、聞こえてたんですか! す、すみません! そんなつもりは全くありません!!」 「ふふふ、冗談ですよ。 モニアさんは本当に真面目ですね」 モニアさんは言葉には出さなかったものの、ヒィッという反応を示していた。 「さあ、本題に入りましょう」 イリュードさんは再び俺の方を向いた。 「まず貴方がなぜ記憶を失っているか、解析しなければなりません」 「……はぁ」 俺はやっと話せるようになった。 この寒さに少し慣れたようだ。 「今から君に魔法を使いますので、動かずにいてください」 そう言うとイリュードさんは俺の胸元に何かを指で書いた。 聞き取れないほど静かな声で何かを唱えると光の象形が現れた。 イリュードさんの右手がゆっくりとその象形の中に入っていく。 暫くそのままの状態でいると突然、バチバチバチッと激しい光が弾けた。 光と共に黒い煙が上がり、イリュードさんの手は真っ黒に焼け焦げていた。 「イリュードさん! 大丈夫ですか?!」 モニアさんがイリュードさんの下へ駆け寄る。 「ええ、大したことはありません」 イリュードさんが黒焦げになった手を、もう片方の手で撫でるとすぐ元に戻った。 「それよりもこれは……少し厄介かも知れません」 「え? 」 「結論から言えば、この少年にかけられているのは忘却魔法ではありませんでした」 「え!? それじゃあ一体……」
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