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「レレレレレレベル0!!?」
モニアさんは俺の腕を掴み、掌に乗った球体をマジマジと見つめている。
「これは……ど、どういうことなんでしょうか!?」
イリュードさんを見るモニアさん。
2人がなぜそんなに驚いているのか、俺だけが分からないでいた。
「あの……そんなに驚く事なんですか?」
「それは驚きますよ! オペレーターとして今まで100万人以上の冒険者のレベル測定をしてきましたが、レベルが0の人は初めて見ましたし……ここではどんな種族のどんな方でもレベル1から始まる決まりです」
「決まり……」
イリュードさんは先程からモニアさんと俺の間をゆっくりと往き来している。
「もしかして、冒険者じゃないからでしょうか?」
イリュードさんはモニアさんの前で止まった。
「モニアさん、貴女は冒険者ですか?」
「あ、いえ、私はそういった才能はなかったので……冒険者登録はしていません」
それを聞きイリュードさんは袖に手を入れたかと思うと、先程俺にも渡した透明の玉をモニアさんにも渡した。
たちまち煙が舞い【Level.15】という象形が現れた。
「おや、これは予想以上に低かったですね」
モニアさんはすぐさまその玉をイリュードさんに突き返した。
突き返されたイリュードさんの手の中にある玉中の煙は【Level.999】と形造っていた。
イリュードさんはそのまま、袖の中に玉をしまう。
「Levelというのは生まれたての赤ちゃんでも少なからず持っているものです。“Level.0“というのは謂わば“無“の状態。何もない生物などいるものでしょうか……」
イリュードさんは俺の掌の上にある玉も回収し、袖の中に入れた。
「興味深いですねえ」
今度は俺の顔をジッと見つめた。
「それにそうだとすると。Level.0の、冒険者でもない彼が、Levelも上げず、何も持たずにどうやってダンジョンを逃げ切ってきたんでしょう?」
「た、確かに……」
「それは……俺にも分かりません……夢中で……ただひたすら走り続けていたら出口に……」
「ほう。それでは目覚める前の事で何か覚えていることはありませんか?」
「えっと……真っ暗な部屋で……何かの地図をひたすら描いてて……でもそれは夢で……」
「ふむ」
「目が覚めたらモンスターに囲まれてました」
「なるほど。それはどんなモンスターでしたか?」
「1つ目と不気味な笑顔の白い顔、それから紅い竜です」
「え?! 苺石竜のいる階層に居たんですか!? イリュードさんでも到達するまで3年はかかった階層ですよ!」
冷たい風が吹気抜けていったと思ったら、モニアさんが氷漬けになっていた。
イリュードさんは俺を見つめたままだ。
「先程話した貴方の中のブラックボックス。それが貴方が何者か、明らかにする鍵になりそうですね」
「俺が……何者か……?」
俺は先程イリュードさんに触れられた、胸の辺りに残る感触を確かめた。
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