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光が消えると俺はイリュードさんと一緒に知らない森の中に居た。
目の前には白いレンガにカラフルな石が散りばめられた、明るい翠色の屋根の荘厳な家があった。
首を動かして見ても、全体像が分からないほど広い。
「ここが私の家です。君も今日からここの一員です。改めてよろしくお願いしますね」
「はい、よろ……しく……です」
ギルドでは見せなかった柔らかい笑顔を見せ、イリュードさんは扉に手をかける。
扉には丸く複雑な紋様が刻まれていて、くり抜かれた部分には透明な石の板が付けられている。
「イルさまぁ〜〜♡ おかえりなさい♡」
扉を開けるとすぐにふわふわしたアゴくらいの長さの薄い金髪の女の子が、イリュードさんに飛び付いて来た。
その子はイリュードさんのお腹の辺りに顔を埋め、スーハースーハーと匂いを嗅いでいる。
「はぁ♡ イルさまは今日もいい匂いですね♡」
「ふふふ。ただいま、ユニコ」
俺もどんな匂いがするのか気になったので、イリュードさんに顔を近付けた。
しかしすぐさま、グイッと頭を押しのけられた。
「チョット!何してんのよアンタ!コレはアタシの特権なんだから離れなさいよ!」
「まあまあ、ユニコ。私は貴女の特権にした覚えはありませんよ。けれど君もこれは真似しなくていいですから」
「いや、俺もどんな匂いなのか気になったので……」
「そんなこと、気にしなくていいですから」
イリュードさんは苦笑いした。
「イルさま、この子は例の?」
「はい。今日から一緒に暮らすことになりましたので、色々教えてあげてください」
イリュードさんは俺の背中にソッと手を当て、俺を女の子の前に押し出した。
女の子はムゥッとした顔をしてイリュードさんに抱きつきながら、綺麗なピンク色の瞳で俺の事をジロジロと見ている。
「アタシと同じくらいの年の、ヒューマンですか?」
「そう見えますね。ただ、彼が何者かはまだ全く分からないんです」
「イルさまでも?!」
「はい。なので明日からは彼と一緒にダンジョンに潜り、調査をしようと考えています」
「アタシも行きますからね!」
ユニコと呼ばれている女の子は、ギュッとより強くイリュードさんに抱きついた。
イリュードさんはそんな彼女の頭を優しく撫でた。
「はいはい。しかし彼も疲れているでしょうから、まずご飯にしましょう」
「はーい!」
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