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次にイリュードさんは俺を連れ、食べ物らしきものが沢山置いてある場所に来た。
トントン、バシャバシャ、ジュージューと色々な音が鳴っている。
とても心地よい匂いもしている。
「ピョン。ただいま」
「おー! イル様! おかえりやさ!」
長い耳の生えた栗色のクルクル頭の男の子が元気よく振り向いた。
力強い濃い緑の瞳をしていて、片手には小さな武器の様なものを持っている。
「今日のご飯も美味しそうですね。いつもありがとうございます」
「いやいや! オイラが食べる為やすんで!」
クツクツという音と、少し甘めの滑らかな香りが漂っている。
「今日から新しい子が、この家の一員になります」
「おー! 例の記憶喪失の子やす?」
「はい。まだ慣れていない事も多いと思うので色々お世話してあげてください」
「あいよ! よろしくやさ!」
そう言って台から飛び降り指を差し出した彼の全長は、俺の胸位までしかなかった。
「よろ……しく」
俺はモニアさんに教えてもらった挨拶をタドタドしく返した。
「なんやさ? 言葉も挨拶も分からなくなっちまったやす?」
「分からなくなった、というより元々知らないのかもしれません。彼に関しては異国から来た者、と思ってください」
「ふーん! よく分からないやすが分かったやすぜ! じゃあ飯が出来るまでもう少しだけ待っててくれやさ!」
「はい。頼みますね」
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