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それなのに、今の話を聞く限りでは、歩乃佳が康史をその気にさせる努力をしてる間、康史自身は新しい彼女とのおつきあいに忙しかったというわけだ。
「去年、私が『私たち、この先どうするのかな?』って聞いたら『歩乃佳が大台に乗るまでにはちゃんとしような』って言ってたから、遅くても40才の誕生日にはプロポーズしてくれるって思ってたのに。あの言葉は何だったの?」
「それは文字通りだよ。『歩乃佳が40になるまでには、二人の関係を清算してお互いの人生の方向性を決めよう』って意味」
「つまりは、私が40になるまでには長い春を解消して、お互いに別々の道を歩もうって意味だったといいたいの?」
「具体的にはそうなるね」
「そんな意味だって思うわけないじゃない!」
「歩乃佳が勘違いしてるって思わなかったから、ごめん」
怒りのあまり眩暈がしてきたが、頭の片隅には妙に冷静な歩乃佳がいた。
康史は確信犯だ。康史を信じて疑うことのない歩乃佳の真面目な考え方を利用されたのだ。
「結婚は子どもを持ちたいから若い子でないと、っていうのが康史の身勝手な言い分なんだね。それにしたって、結婚の為に若い子と付き合うなら、まずは私と別れるのが筋でしょ? 二股交際は私に対しても、その彼女に対しても失礼だよ!」
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