もうすぐ40才の誕生日なのに捨てられました

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「なんで? どうして? ひどい! ひどすぎるよ!」 歩乃佳はこぶしで涙をぬぐいながら歩いていた。 つい先ほどまで恋人、いや、恋人だったはずの折戸康史(おりとやすし)と交わしていた会話を思い出すと、怒りと悲しみで胸が張り裂けそうだ。 「ごめん、結婚したい人ができたんだ」 一瞬、言葉の意味が分からなかった。康史の彼女は歩乃佳自身だと思っていたのに。7年も付き合ってきたのだ、結婚するのが当然だと思い込んでいた。 「私たち付き合ってたんじゃなかったの? どういうこと?」 「歩乃佳と付き合ってたのは確かだけど、俺たちもう結婚とかそういう関係じゃなかっただろ?」 「康史がそんな風に思ってたなんて知らなかった。私こそが康史の恋人なんだと思ってたのに」 あまりの言い分に、妙な声が出てしまった。 「確かに、歩乃佳は俺の恋人だけど。結婚するなら別の子と、って考えてたんだ」 「どういうこと? 何言ってんだか、わかんないっ!」 つまりは二股かけられていたということだろう。悪びれずに事実を認める康史は、まるで知らない人のようだ。33才の頃、友人の紹介で知り合ってから今まで7年近く付き合ってきた、歩乃佳がよく知る康史はどこへ行ってしまったのだろう。
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