もうすぐ40才の誕生日なのに捨てられました

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「それって一般論かと思った」 「一般論って?」 「俺と歩乃佳が結婚したらって意味じゃなくて、将来歩乃佳が誰かと結婚したらって意味かと」 「はぁっ?! なに言っちゃってるの?」 詭弁もいいところだ、康史がこんな白々しい嘘がつけるなんて思ってもみなかった。 「長く付き合ってるし、以前は結婚話が出たことだってあったんだから、わざわざ言わなくたって私と康史の間の話に決まってるじゃない」 「そうなんだ。俺的には結婚話はあの時に終わったんだと思ってた」 「なんで? 『時期をみよう』って言ったじゃない。自動継続してるって思うでしょ! 普通! お互いに落ち着いたら結婚するんだろうって思ってた」 「いや……俺、時効になってると思ってた」 時効? 康史の中では歩乃佳との結婚はもう無いと決まってきたなんて、想像もしてなかった。 確かに30代半ばの頃は、仕事に趣味に恋愛にと毎日が忙しく充実していた。 ハンドメイド作品を手作り作品販売サイトのミンネンやクリーメで売り始め、一端(いっぱし)のハンドメイド作家気取りになったのもこの頃のこと。ミンネンのクリスマス特集に取り上げられたおかげで歩乃佳の作った刺繍ポーチは飛ぶように売れた。 当時は会社員とハンドメイド作家の2足の草鞋を履いていた上、康史の転職話も重なったので、結婚はもう少し後でもいいかと思っていたのは確かだ。
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