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新たな道へ
(ここは……)
光に包まれた後、ロイは意識を取り戻した。目の前に広がるのは天井。正直、神様の言っていた事を完全には信じきれていなかった。
だが、どうやら本当に自分は転生したらしい。
(何だ……全く身動きが取れない。いや、手足は動く。何故だ)
「アルちゃーん。ママですよー」
(アルちゃん……? ママ……?)
ロイを愛おしそうに覗き込む女性は、確かに自分をアルと呼んだ。そして、自分の事を母親であると。その時、ロイは全てを理解した。
(俺の事だ……! そして、俺は赤ん坊になったんだ……!)
ロイ改めアルは、母親だと名乗る女性に抱き抱えられると不意に目に入った鏡に目をやる。
(何だ……! この天使のような赤子は……!)
鏡に映し出された自分の姿は、まるで天使のようだった。そして、自分を抱く女性は女神のような美しさだった。
「起きたのか?」
「起きたわよ。私達の可愛いアルちゃんが」
この男性はどうやら自分の父親らしい。彼もまた容姿が良いとアルは思った。精悍な顔立ちをしている。腰に剣を携え、鎧を纏っている所を見ると、彼は騎士か何かなのだろう。
「アルちゃん呼びはやめたらどうだ? いずれかは嫌がられるぞ?」
「今はいいの!」
彼らの話に耳を傾けると、自分はアルフォンスという名を付けられた。そして母の名はマリア、父の名前はガイゼル。家の造りから見ても、裕福な家庭のようだ。
(とりあえず、神様が言っていた最悪の転生ではなかったな)
自分は運が良かったのだとアルは思った。それよりも、自分達の息子がこんな赤ん坊の状態からこんな事を考えているなど予想も付かないだろう。そして何より、死んだ時は間違いなく彼らよりも自分の方が年齢が上だったのだ。
(とは思いつつも……これでは少なくとも三年は自由に身動きが取れんな……)
やりたい事は色々ある。そして、自分が死んでから何年後の世界なのかも気になる。神様が言っていた後世に語り継がれるというのも、どういう風に語り継がれているのかも気になるところである。
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