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未来転生
良い人生だったと思いたい。
そう思いながら、自分の死期を悟った老人がベッドの上で天井を見ている。彼の名はロイ・クルラクニス。世間では勇者と呼ばれていた老人である。
「今思えば……中々大変な事をやり遂げたのかも知れんな……」
勇者と呼ばれたり、生ける伝説などともてはやされた人生だった。だが、それでもロイは心の中で微かな引っかかりを感じていた。
「自分が死んだ後、もし魔王が復活したら誰が……」
後進の育成をしなかったわけではない。しっかりと次世代を担う者達を世の中に排出してきたつもりではある。しかし、それでも不安というのは尽きないものだ。
「もう少し……先の未来を見てから死にたかったものだ……」
いくら勇者やら生ける伝説やら呼ばれようとも、寿命という生きるもの全てが等しく持っているものに抗う事は難しい。死にたくないわけではない、もう少し安心してから死にたかったのだ。
「後……の、事……は……皆に……託すと……しようか……」
意識が遠のいていく。恐怖はない。どちらかというと眠気に近い、そんな思いを持ちながらロイは息を引き取った。
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