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ロイは、死後の世界を生前考えた事がある。どんな事が待ち構えているのだろうか、と。よく言う天国や地獄。どちらかの世界に自分は行く事になるのだろうか。出来れば天国が良いと思っていた。
「……あなたは誰だ?」
「儂? 儂、神様」
何もない真っ白な部屋。確かに自分は死んだ。だとしたらここは死後の世界なのだろうか。気になる事があるとしたら、目の前に佇む老人が自分を神だということだ。
「神……?」
「そう、神様。主は、勇者ロイ・クルラクニスで間違いないな?」
どうやら自分を神だと名乗る老人は、ロイの事を知っているようだ。一方で、ロイはその老人が神だと名乗る事に対して半信半疑のようだ。
「周りはそう言うな。でも、俺は自分を勇者などとは思った事はないよ。ところで、その神様とやらは何故俺の前に現れたのだろうか?」
「正しく生きてきた主に、サプライズプレゼントってやつじゃな」
「サプライズプレゼント?」
「ロイ、品行方正に生きてきたお前に、今一度全盛期の能力と記憶を残したまま、未来に転生させてやろう」
「……は?」
何を言っているんだこの爺さんは、とロイは思わざるを得なかった。未来に転生とはまた意味の分からない事を言う。
「何を言っているんだこの爺さんは思ったじゃろう。まあ、慌てるでない」
「慌ててなどいない。というより、俺の思っている事が分かるのか?」
「そりゃあ、神様じゃからな。で、話を先に進めるんじゃが、未来でお前が杞憂している事は何一つ起こらん。普通に平和で魔王などと呼ばれる者は復活せん」
「本当か?」
「本当じゃ」
ロイには俄に信じられない話であった。だが、不思議とこの神だと名乗る老人が嘘をついているとも思えなかったのだ。
「だとしたら、別に俺は転生とやらをしなくても良いんだが」
「言ったじゃろう。これはサプライズプレゼントじゃと。お前は自分の人生の大半を魔王討伐と、後進の育成に使ってきた。その功績はとてつもなく大きな事。未来でのお前さんは、色々な方法で語り継がれる存在となっておる」
「凄いな……」
「で、主に今一度、主が平和にした世界の未来を生きる権利を与えに来たというわけじゃ」
唆られる話である事に間違いはない。その神様が言う未来を、今の自分が持っている記憶と能力を持ったまま生きてみたい、ロイはそう思った。
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