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満月の出会い
どんっ!
「あっ、すみません…」
「いや、俺こそごめん。夜空見て歩いてたから…大丈夫ですか?」
「夜空?」
「ええ。月がとっても綺麗な夜ですね」
午後9時の公園。小さな街灯がいくつかあるだけで暗い。
僕も夜空を見上げる。
「うわ、ホントだ。すごい…」
「だろう?なんか…君を夏目漱石で口説いてるみたいで申し訳ないないな」
「ふふ、では《星も綺麗ですよ》じゃ無かった《星の方が綺麗ですよ》ですかね?」
初めて相手の顔を見る…うわぁ、イケメン…
何でそんなにビックリした顔をしてんの?
「はは、答えて欲しかった人にはスルーされたんだ。ただ《本当だ》って。まさか初めて会った君に…と言うか男性に答えて貰えるとは」
「彼女さんに申し訳ないですね…」
「いや、彼女は俺の顔や立場が好きなだけだ」
「そうですか…あなたは?いや、余計な事を…すいません」
「いいんだ。誰かに話したかった。彼女の《本当だ》を聞いて一気に冷めたよ。俺もなんとなく付き合ってただけだ。別れてきたんだ。たった今…」
「そうですか…」
「ああ、何だか疲れてな。女なんてプレゼントとセックスがあれば愛なんてどうでもいいんだろうな。ああ、すまない。まだ若い君にこんな事聞かせて…」
「若いって…僕これでも24ですよ?」
「え…それは失礼した。あまりにもかわいいから大学生ぐらいかと…」
「ふふ、いいんです、よく言われるので。僕は恋愛経験は少ないけど…それでもやっぱりお金とかより愛がいいなと思います」
「やっぱり、かわいいな」
「かわいいより、カッコいいって言われたいんですけど…」
「はは、君は家が近いのか?こんな時間にこんな所で…」
「ええ、駅からここを通り抜けると近道になるので…あなたも?」
「ああ、この公園抜けた所だ」
「もしかして、アルテミスIII…」
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