満月の友人

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満月の友人

ピロリン あ、片桐さんだ… 【今日はありがとう。酒井くんと月が見られて良かった。部屋からもまだ月が見える】 【こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。残念ながら僕の部屋からはもう月は見えません。僕の分まで楽しんでください】 【そうか、とても綺麗だよ。次は俺の部屋から月を見よう。酒は好きかい?】 【ええ、あまり強くはありませんが飲むのは好きです。お呼ばれしてもいいんですか?】 【ああ、酒とつまみを用意するよ。楽しみだ。また、連絡する。おやすみ】 【ありがとうございます。僕も楽しみにしています。おやすみなさい】 (やったぁ、宅飲みに誘われた。手ぶらで行くわけにもいかないな。どうしよう…マンションの最上階に住んでるぐらいだから…ちょっと良いワインを用意しよう) (よし、さりげなく誘えた。酒は…ワイン、日本酒…まあ一通り揃ってるから問題ないな。グラスに皿、料理は得意だから何にでも合いそうな物を数品作ろう) それぞれの思いを胸に、ベッドへ入った。 それから俺たちは、満月の度に二人で飲むようになった。仕事の事や家族の事、ひと月分の出来事をお互いに話した。 ただ意図的なのか、お互いの女性についての話は一切出なかった。 片桐さんの家にお邪魔する事にも、慣れてきた頃、俺たちは【龍弥さん、伊織】と呼び合うようになっていた。 二人で居られればそれでよかった。例え満月の友人と呼ばれる仲だったとしても。 それがお互いに心地よかった。男同士、カッコつける必要もなく、お互いスウェット姿であったとしても。 (龍弥さんはカッコつけなくてもカッコいいから…) (伊織はそのままで充分、かわいいよ…)
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