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満月にひとり
今日は満月、龍弥さんの部屋に行く日。今日は酒屋の店員さんオススメの日本酒を買った。
俺は、仕事終わりに一度家に帰りシャワーを浴びてお邪魔する事にしている。
あんなカッコいい龍弥さんに臭いなんて思われたくないから。
(龍弥さん…お酒、喜んでくれるかな?)
ピンポーン
同じマンションだから直接部屋のインターホンを鳴らす。
ガチャ
「え?」
「はぁーい、どちら様ですかぁ?」
若い、ヒラヒラのエプロンを着けた可愛らしい女性。
「あ、あの…りゅ…いえ、片桐さんは?」
「ああ、彼ならシャワー浴びてますけど…あなたは?」
可愛い女性、シャワー…
俺はハッとする。
「いえ…あの…僕、片桐さんにはお世話になってて…あの…これ、お二人でどうぞ」
俺は、龍弥さんの為に悩みに悩んで買った日本酒を彼女に渡した。
「僕が来たことは言わないでください…失礼します」
後ろから、僕を呼び止める女性の声が聞こえた。けれど僕は走った。龍弥さんと出会った公園まで…
約束をしてたのは二回ぐらいかな、その後は連絡しなくても二人の約束だった。カレンダーとスマホで満月を確認してただけだった。
「はぁはぁ…ふぅ…」
龍弥さんに彼女がいたっていいじゃないか。いや、いて当然だ。あんなにカッコいいんだから。
夜空を見上げると、月が綺麗な夜だった。
目を閉じてみる。
『月がとっても綺麗な夜ですね』
あの日の龍弥さんの声が聞こえる。
写真だけでも…と思いポケットに手を突っ込む。
そっか…龍弥さんの所に行く時はスマホ持って行かないんだ。誰にも邪魔されたくなくて。僕がそう言うと笑って自分もスマホの電源を落としてくれた。
「これで、伊織と二人だけだ」
そのセリフにときめいたっけ…
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