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引き連れている間定茂はもがいていた。 しかし基規は今の立場を獲得するために運動能力や筋力の強化も行っている。
余程喧嘩慣れした相手ならともかく、進学校のやんちゃくん程度ではどうにもならなかった。
「おい、基規! 何の真似だ!!」
教師に見つからないところまでやってくるとようやく腕を解放した。 逃げられないよう定茂を壁に追い詰める。
「それはこっちの台詞だ! 何お前秋律に変な命令をしてんだよ!!」
その言葉に定茂はフッと笑って言う。
「一体何のことかなぁ?」
「しらばっくれるな!!」
「確かに俺たちは前回までアイツに色んな命令をしてやらせていたけど」
「その前回のことだよ!!」
追い詰めると胸倉を掴まれた。
「それはお前が決めたルールだろうがぁッ!!」
「ッ・・・」
「それに今回はアイツも王の立場になって喜んでんじゃねぇの? まぁ、次は絶対に引きずり降ろしてやるけどな」
「それが悪いって言ってんだよ! 人を裏から蹴落としたり秋律を利用して俺様を落とすとか、汚ぇことをしてんじゃねぇッ!!」
声を荒げると定茂は拳を握り締め基規の腹に向かって突き出した。
「ぐッ・・・」
「一体何の話をしてんのか分かんねぇけど、奴隷が俺に逆らうなッ!!」
もう一発の攻撃は予測できていたためかわすのは容易だった。 いくらトレーニングしていても殴られれば痛いに決まっている。
外傷の見えない位置を殴ってきたことから殴り慣れているのかとも考えたが、今はそれ以上気にしていられないかった。
「次のテストまでならお前にこき使われてやろうかとも思ったけどな。 秋律も巻き込んじまったらもう容赦はしねぇ!!」
そう言って定茂に飛びかかろうとしたその時だった。
「二人共! もう止めて!!」
走って止めに入ってきたのは秋律だった。
「秋律・・・ッ! 危ねぇから秋律は来んな!!」
「駄目だよ! 手を出すのは流石に駄目だ!!」
それでも秋律は強引に二人の間に割って入ってきた。 身体で喧嘩を止めようとしている。
―――非力な秋律が力で勝てるわけがないだろ・・・ッ!
「秋律! 頼むからどいてくれッ!!」
それでもどかない秋律に定茂が言った。
「秋律! 今は俺とコイツの時間なんだ! 勝手に入ってくんな!!」
「・・・」
「王になったからって調子に乗るなよ!? 喧嘩をすれば俺の方が強いんだ! あんまり調子に乗っていると、足の骨でも折って動けなくしてやるからな!!」
それを聞いた途端秋律の身体が強張った。
―――・・・秋律・・・?
その違和感に基規と定茂の力も弱まっていく。
「・・・ふぅん。 ルールを無視してそういうこと言うんだね?」
「あ、あまり調子に乗るなって言ってんだよ!!」
「・・・君が言ったんだよ」
秋律はそのまま何も言わずに体育館へと戻っていった。
「おい・・・。 秋律・・・?」
基規は秋律の異変が心配になり後を付いていった。 そして秋律は外から体育館の屋根へとよじ上っていく。
―――一体、何をしに・・・。
『あんまり調子に乗っていると、足の骨でも折って動けなくしてやるからな!!』
先程の定茂の発言がリピートされた。
―――まさかッ・・・!
「秋律! 降りてこい!!」
基規の命令には当然答えてくれない。 基規の声により生徒や教師も外へとやってきた。
「秋律! 止めろッ!!」
そう放った瞬間秋律は皆の前で体育館の屋根から飛び降りたのだ。
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