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数日後、基規は平日だというのに自分の部屋で暇を持て余していた。 というのも数日の自宅謹慎を命じられてしまったからだ。
―――退学にならなかっただけよかったのか・・・。
やはり差別にも繋がるカースト制度は教育委員会からしたら問答無用でNG。 ただその理由や、いじめられていた生徒の援護もあり名目上は出席の自宅謹慎という変わった処分を下された。
―――まぁ元々俺の成績がよかったこともあるし、学校としても俺の評価を下げたくないという理由もあったんだろうな。
―――努力は嘘をつかない、そういうことなのかもしれない。
本を読んだり勉強をしながら時間を潰しているとインターフォンが鳴った。 今は親が仕事でいないため自分が出ることにした。
「秋律・・・ッ!?」
「やぁ」
ドアを開けて驚いた。 そこには秋律が笑顔で立っていたのだ。
「どうしてここへ? 秋律学校は!?」
「基規が退屈で部屋死にしているんじゃないかと思って、こっそり抜け出してきた」
「いやいや、それは駄目だろッ!!」
秋律は二階から飛び降りたが幸い足からの着地で軽い足の骨折だけで済んだ。 松葉杖を使えば普通に歩けるらしい。
「というのは嘘で、病院へ行ってきた帰り。 本当は学校へ遅れていく予定だったけど、たまには別にいいでしょ?」
「軽いな。 秋律ってそんなキャラだったっけ?」
二人は楽しそうに笑った。 基規は秋律を家に招き入れる。 秋律は部屋へ入ってくると興味深そうに眺め始めた。
「昔とそんなに変わっていないね。 基規の見た目や雰囲気はがらりと変わったのに」
「まぁ、人に見せる自分だけ変えればよかったからな。 元々ごちゃごちゃしたのは好きじゃないんだ」
「ふぅん」
基規は飲み物やお菓子を持ってくると秋律は興味深いことを話し出した。
「そう言えば、テストに細工してこいっていう命令をされたって言ったけど、あれは嘘だから」
「あぁ。 ・・・って、はぁッ!?」
さらりととんでもないことを言い出した。
「僕が満点を取って王になると同時に基規を最下位にして奴隷にしようと思ったんだ」
「いや、待ってくれよ。 どうしてそんな・・・」
「・・・だってこのカースト制度を始めて王になる人は、奴隷も経験するべきだと思ったから」
それは基規自身考えていたことでもあった。 いじめられていた冴木を助けるためではあったが、自分自身王で居続けていい思いをし続けていいのかということを。
「・・・まぁ、確かにその通りだよな。 秋律が連続で最下位になった時、あれはわざとだったけど、本当は俺が最下位になって代わってやるべきだったんだ。 ・・・ただ王の座があまりにも居心地よくて」
「そう、それだよね。 基規はカースト制度を作った本来の目的を忘れているんじゃないかと思ったんだ」
「ぅ・・・」
「だから奴隷になってもらって思い出してもらった」
「・・・悪かった」
「いいよ。 それに基規が王でいてくれたから僕への命令は酷くならずに済んだんだ」
「それはまぁ、当然なんだけど・・・」
そこで疑問に思っていたことを尋ねた。
「それにどうしてあの時飛び降りたんだ? 秋律は王なんだから人の命令なんて聞かなくてもよかっただろ? そんな松葉杖生活になっちまって・・・」
「僕は基規の作ったカースト制度を終わらせたかったから。 もちろんいじめをなくしたままでね」
秋律は基規が持ってきた飲み物を口に運んで更に続けた。
「王になって廃止するのは簡単だけど、そうすると前にいじめられていた冴木くんがまたいじめられるようになる可能性もあったんだ」
「あぁ、そうだな。 出口戦略は俺自身考えていなかった」
「だけど大きな怪我人が出て事件になるようなことが起これば、カースト制度は廃止になると思った。 そして定茂くんが命じたことになれば、この先大きな顔をするのは難しくなると思ったんだ」
「そうだったんだな・・・」
「本当はこれは基規にやってほしいところだったけどね?」
「それは本当にすまない! 俺はもうアイツらとつるむことはないから」
「・・・うん」
「だから秋律。 またお前の隣にいてもいいか? 昔の頃みたいに髪色も身だしなみも全て戻すから!」
「・・・別にそこまでしなくてもいいよ。 ただこれからはちゃんとライバルとして勉強に取り組んでいきたい。 ・・・願うことなら、昔みたいに仲よくできれば」
「あぁ、もちろんだ! これからよろしくな、親友!!」
-END-
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