俺様ルールカースト

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基規と秋津の溝は高校生になる頃には埋められない程になっていた。 といっても、互いに不干渉というだけであり、用事でもない限り会話すらしない間柄。 そしてこの先もそれが続いていくのだと思っていたが、カースト制度を作ったことで奇妙な接点が生まれた。 基規が王で秋津が奴隷になったのだ。 ―――俺様は秋律を今までずっと庇っていた。 ―――その理由は秋律との関係がこじれたのは俺様のせいだからだ。 ―――・・・俺様が勝手に秋律を置いて、変わろうとしたから。 過去のことから負い目を感じ秋律が最下級になってもさり気なく庇っていた。  ―――でもどうして俺様がこんなになっちまったのかは、秋律は分からないんだよな? ―――・・・俺様が急に荒れ出したとか思ってんだろうな。 小学生の頃の好きな人ができたということを秋津には話していない。 勉強のことばかり話していたせいで、それを相談していいのか分からなかったのだ。 もしかして薄々勘付いていたりしたかもしれないが、特に何かを言ってくるようなことはなかった。 ―――で、今度は俺様が奴隷かよ。 定茂が王だなんて認めたくはないが、決めたルールを自分が破るわけにもいかない。 「ダサい丸眼鏡でも付けて毎日勉強漬けの日々を送っていたのか?」 「あぁ?」 「ふッ。 つまらない人生を送っていたんだな」 その言葉に怒りを覚えた基規は机を思い切り叩いた。 「がり勉のことを悪く言うなよ!!」 「認めたんだな? 別に悪くなんか言ってねぇだろ?」 「がり勉の何がいけないって言うんだ!? チャラいお前とは違って、真面目に自分の人生を歩んでいるだけだろうがッ!!」 感情に身を任せたせいで定茂の胸元を掴んでいた。 あまりの迫力に教室の生徒は皆静まり返っている。 「お前はそのつまらないがり勉生活から変わろうとしたんだろ? よかったじゃないか」 「よかっただと?」 「小さくて窮屈な世界から、ようやく大きくて広い世界へと踏み出したんだ」 「がり勉を悪く言ってんじゃねぇかよ!!」 「俺はお前が羨ましいよ。 俺よりもチャラチャラして毎日楽しそうな日々を送ってんじゃん」 「このッ・・・!」 「一人くらい女を寄越してもよくないか?」 基規は胸倉から手を放し定茂の横の壁を思い切り殴った。 「・・・今俺様がリア充でいられてんのはな。 俺様が変わろうと努力した結果だよ」 「・・・」 「がり勉からチャラい人間になるのは想像するよりも簡単じゃねぇ。 真面目な自分も心のどこかに残っているから、葛藤の日々だった」 そう言って定茂の胸に強く拳を当て鼻で笑ってみせた。 「まぁ、この努力はお前には絶対に分からないだろうけどな?」 それを聞き定茂は思い切り基規の腹を蹴った。 「ぐッ・・・」 「お前じゃねぇだろ? 奴隷のお前は王の俺よりも遥かに下だよなぁ!?」 「ッ・・・」 「まともに口すら利ける関係じゃねぇだろ!? 定茂様と崇めるんだろうがぁッ!!」 荒れる定茂は周りにある席を吹き飛ばした。 女子生徒は軽く悲鳴を上げるだけで騒いだりはしない。 喧嘩なんて日常茶飯事で、止めても無意味だからだ。 「ちッ。 誰が呼ぶかよ、そんな汚ぇ名前」 「俺が今回成績トップの王。 王の命令は絶対だ!!」 定茂は基規の胸倉を掴んだ。 そして小声で言う。 「このルールを作ったのはお前だろ?」 ニヤリと笑う顔を見て基規は全てを悟った。 「・・・そうか、分かった。 やっぱりお前なんだな?」 「はぁ?」 「俺様の答案用紙から全て名前を消してくれたのは!!」 「何のことかなぁ?」 「しらばっくれるな! これは完全な不正だぞッ!! 俺様を最下位にすために不正を使いやがって!!!」 そう言うと定茂は基規の頭を片手で強く掴んだ。 「そろそろ黙れよ奴隷。 何の証拠もないのに人を犯罪者扱いしてくれるなよ?」 「誰が黙るッ」 「今まで散々こき使われていた分、何倍にもしてやり返してやるから楽しみにしておけよ?」
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