俺様ルールカースト

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基規はムシャクシャして頭を掻きながら廊下を歩いていた。 物に当たっても仕方のないことは分かっているが、どうにも収まらない。 ―――今までアイツには大したことしていなかったっていうのに。 ―――アイツがしたことは次俺様が王になった時に全く同じことを・・・。 ―――いや、倍にして返してやるからな!! ―――・・・といっても、それは三ヶ月後か。 ―――こんな生活耐えられるかよッ!! 力任せにゴミ箱を蹴ると中身が飛び散った。 それを拾わずに通り過ぎようとする。 「・・・ん?」 その時ある影が横切った。 何気なく振り返ると、そこには秋律がいてゴミ箱の中身を拾い回収していた。 「秋律・・・ッ!」 「・・・」 二人きりになったのは久しぶりだ。 いや、王と奴隷の間柄で言えばそうでもないのかもしれない。 ただ今の立場は限りなく近い。 自分が名無しでゼロ点だとすれば、次の階級は秋津になる。 ―――秋律っていう名前を口にしたのも久々だな。 ―――いつも他の奴らがいる前では奴隷って呼ばざるを得なかったからな・・・。 かつて仲のよかった秋律を奴隷呼ばわりするのは正直気が引けていた。 ただ他への示しが付かないため仕方なくそう呼んでいたのだ。 ただ秋津からしてみればたまったものではない。  「よせよ。 そんなものお前が拾うな」 そう言ってしゃがんでいる秋律を立たせようとするが手を振り払われた。 「ちょッ・・・」 「これは基規のためじゃない。 ここにゴミが散らばっていると邪魔だから片付けるために拾っているだけ」 「・・・」 秋律がゴミを拾っている間基規は考えた。 ―――ここは何て声をかけるべきだ? ―――久しぶりに話すなら今しかチャンスはない。 ―――でも何を言えば・・・? 今までのことを謝ればいいのだろうか。 言葉がまとまらない中、それでも何とか言葉を繋げようとする。 「・・・あのさ」 「奴隷が僕に話しかけないでくれる?」 「ッ・・・!?」 まさか秋律から奴隷と呼ばれるとは思ってもみなかった。 ただクラスカーストのルールからすれば最下位は圧倒的に立場が悪い。 僅差とはいえそう言われれば基規は何も言えなかったのだが、秋律はゴミを片付け元の場所に戻すとケロリと笑っていた。 「嘘だよ。 何? どうしたの?」 「・・・いや、今までのことを謝りたくて」 明らかに動揺してしまっていた。 秋律は軽く首を横に振っている。 「いいよ、別に」 「でも簡単に許せる期間じゃないと思うし」 「基規はずっと王だったよね? やっぱり凄いよ」 「・・・そうかな」 「見た目や嗜好が変わっても頭のよさは昔から変わらない」 「・・・」 見た目を比較され少し胸が痛んだ。 「それに僕、知っていたんだ。 基規がこのカースト制度のルールを決めた本当の理由」 「・・・ッ!」 「僕が奴隷の時、いつも基規は簡単な命令をしてくれたよね。 それで基規がこのルールを定めた理由を確信できた」 「・・・全て気付いていたのか?」 「うん。 それが最善の策だったのかは僕には分からないけどね」 「・・・」 「だけど基規のおかげで救われた人がいる。 もちろん虐げられることになった人もいるけど」 「ぅ・・・。 確かにそうだな。 秋律には本当に悪いことをしたと思ってる」 「結構キツかったよ? 僕じゃなかったら自殺していたかもね」 「ッ・・・!!」 そう言った秋律の顔は笑顔だったのに、今まで見たことがないくらいに恐ろしく見えた。 「おーい、基規! 何をしてんだ! 早くしろ!!」 凍り付いた空気を切り裂くような呼び声、それに反応し声の方を見ると痺れを切らしたのか定茂が遠くから叫んでいた。 「・・・ちッ。 相変わらずうるさい奴だな」 そう漏らし振り返ると先程までいたはずの秋律がいなくなっていた。 ―――・・・まぁ、秋律から恨まれても仕方のないことか。 今の身分は奴隷ということで素直に売店へと急いだ。 命令通りの一番高いものを探す。 「って、高ぇ!!」 つい叫んでしまうと周りの注目を浴びた。 誰が買っているのかも分からない一日限定10個の高級弁当、一つ3000円を四つ買って急いで教室へと戻る。 流石に毎日なら基規も買わなかっただろうが、初日ということで意識が緩んでいた。 ―――これは流石に金を回収させてもらうぞ! 「買ってきたぞー。 流石に三千円は高いから自腹で払え、って・・・」 教室へ入ってから唖然とすることになる。 「・・・秋律?」 先程まで一緒にいた秋律が定茂たちのグループに混ざっていたのだ。
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