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「・・・そう。 僕は別に彼らのグループに入ったわけじゃない」
「やっぱり! じゃあどうしてあそこにいたんだ!? 脅されたのか?」
聞くと秋律は気まずそうに視線をそらした。
「・・・聞いてしまったんだ。 先週の放課後」
「放課後?」
「うん。 定茂くんたちが基規の陰口を言っているところを」
「・・・ッ」
良好な関係とは言い難かったが、仲違いしていたわけでもない。 同じグループとして学校生活を共有していたのは確かだった。
もっとも基規が王の座から転落したのを見て態度を一変させたことからしても不思議ではなかった。
「・・・陰口って、何を言っていた?」
「言ってもいいのかな・・・」
「問題ない。 別に告げ口しただなんて思わないさ」
秋律は少し考えた後に教えてくれた。
「・・・アイツは調子に乗り過ぎ。 こんなカーストルールのせいで一緒にいてやっているけど、性格終わっているあんな奴と友達でいたいと思う奴なんているわけがないよな。
・・・次の中間でどうにかして最下位へ落としてやろう、って・・・」
「そんなことを言っていたのか・・・ッ!」
「でも僕は止めに入ることができなかった。 本当は止めたかったんだ。 確かに基規がやっているカースト制度はいけないことだと思うけど、それ以上に僕は基規のいいところを知っている」
「・・・」
「・・・ならどうすればいいか? 僕が王になってしまえばいいと思ったんだ」
王になれば腕っぷしの強さやその他の力も関係なくクラストップの権力を握る。 それが今のルールなのだ。
「ただ僕がトップになることはできても、基規が満点で同じ順位になってしまったらどうなるのか分からない」
「同率1位は仕方がないよな。 でも満点だなんて凄いわ」
「基規はいつも満点だったじゃないか。 満点を褒めるっていうことは、基規自身を褒めるっていうことでもあるよね」
その言葉に少し間を空けて尋ねた。
「今までは手を抜いていたんだろ? でもその状態から満点を取るのは大変だったはずだ」
秋律は小さく笑った。
「・・・さぁ? それは基規の想像にお任せするよ」
「何だよ、それ・・・」
小さい頃からの仲だから秋律は本当に頭がよかったことを知っている。 そこで思い出した。 高校に入って初めてのテストの時、秋津は好成績だったと思っていたが、自分より上の成績だったのだ。
それに負けないよう努力し次の試験では一位をもぎ取った。 しかし、カーストルールを始めてから秋津は基規の見える範囲の成績圏外にいってしまっていたため記憶から忘れ去られていた。
少しずつ秋津を過小評価するようになっていたのだ。
「どうしてそんなことをした? 俺様がカースト制度を作ったら余計に手を抜くべきじゃないだろ?」
「僕は基規がただ我儘をしたくてカースト制度を作ったわけじゃないことを知っていたから」
「・・・」
「どんな理由があってそうしたのか気付いていたんだ。 だからあえて最下位の成績に収まった」
「全て分かっていたって言っていたもんな・・・」
「ただね? ・・・いや、いいや」
秋律の事情は理解したがまだ疑問が残っていた。
「じゃあ俺様のテストに細工したのはやっぱり定茂たちだったっていうことか?」
「ん?」
「俺様のテストに細工されたことは秋律がトップになったこととは関係ないよな? 秋律は同率1位になることを想定していたんだから」
「・・・」
「秋律?」
秋律は少し迷った挙句こう口にした。
「それは違うよ。 僕は前回奴隷の位置だった。 ・・・基規のテストに細工して来いって命令されて、僕がやったことなんだ」
「なッ!?」
「色々と細工させてもらったよ。 単純に名前を消したとかじゃないから分からなかったでしょ?」
「どうしてそんな命令を・・・ッ」
そう言うとは秋律は真剣な目付きになった。
「だってそれがルールでしょ!? 最下位になった人間は奴隷となって、それより上の成績の言うことを聞かないといけないって!」
「てことはアイツらが無理矢理・・・ッ!」
それを聞いた基規は居ても立っても居られなくなり隣のコートへと侵入した。
「基規? おい、何をすんだよ!」
試合中の定茂を強引に引っ張り体育館を飛び出す。
「おい! まだ授業中だぞ!!」
教師は慌てて追ってくるもそれを振り切った。
―――秋律を利用しやがって。
―――絶対に許さねぇッ!!
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