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 ワイングラス片手に横から割りこんできたのは、チームメイトのヨハンだ。  北欧人特有の怖いくらいに澄んだブルーアイは、アルコールのせいでとろんと淀んでいる。故郷のノルウェーからアデレードに乗り込んで早々、気温差で風邪を引いた彼も、レース最終日になってようやく回復したらしい。  酔っぱらいの勢いで寄りかかってくる大男の肩に、イーサンが「こらこら」と腕をまわす。いたずらっぽい笑みを浮かべながら、うりうりと赤く火照った坊主頭に拳を押しつけた。 「なんだよヨハン、嫉妬か?」 「してねぇよ。おこちゃまに聞かれちゃならない話は、部屋に帰ってからしろって言ってるんだ」 「なにが?俺たち肉の話しかしてないぞ?なあ、レム」 「ああ、ワギュー最高って話だ」 「ワギューかアギューか知らねぇけど、そんなに美味いんだったら次のレースで俺たちに食わせてくれよ、イーサン」  なあ?とワイングラスを傾けてみせるヨハンに、イーサンは一瞬きょとんとした顔をする。それからすぐに不敵な笑みを浮かべた。
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