24人が本棚に入れています
本棚に追加
ワイングラス片手に横から割りこんできたのは、チームメイトのヨハンだ。
北欧人特有の怖いくらいに澄んだブルーアイは、アルコールのせいでとろんと淀んでいる。故郷のノルウェーからアデレードに乗り込んで早々、気温差で風邪を引いた彼も、レース最終日になってようやく回復したらしい。
酔っぱらいの勢いで寄りかかってくる大男の肩に、イーサンが「こらこら」と腕をまわす。いたずらっぽい笑みを浮かべながら、うりうりと赤く火照った坊主頭に拳を押しつけた。
「なんだよヨハン、嫉妬か?」
「してねぇよ。おこちゃまに聞かれちゃならない話は、部屋に帰ってからしろって言ってるんだ」
「なにが?俺たち肉の話しかしてないぞ?なあ、レム」
「ああ、ワギュー最高って話だ」
「ワギューかアギューか知らねぇけど、そんなに美味いんだったら次のレースで俺たちに食わせてくれよ、イーサン」
なあ?とワイングラスを傾けてみせるヨハンに、イーサンは一瞬きょとんとした顔をする。それからすぐに不敵な笑みを浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!