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 背中にまわったイーサンの両腕にギュッと抱きしめられ、レムは唐突に、自分が汗と埃まみれの酷い有様だということに気づいた。動揺で心臓がバクンと音を立てて跳ね上がる。  動揺も何も、真夏の太陽の下を四時間以上走ってきたのだから当然だ。シャワーを浴びたあとでないとエースから感謝のハグを受けたくないなんて、そんな十代の少女みたいな潔癖を持ち出すつもりはさらさらない。  けれど、レムの心臓は確かにバクバクと波打っていた。激しい運動をしたあとだから焦る必要はないはずなのに、グローブに包まれた掌が、新しい汗でじわりと濡れる。密着したジャージ越しにスプリンターの鋼のような筋肉の感触を感じて、レムは奥歯をグッと噛みしめた。そうでもしないと、妙な息を漏らしてしまいそうだった。  のろのろと腕を持ち上げ、そっとイーサンの背中に掌を添える。緊張が伝わらないように、できるだけ軽い調子でポンと叩いた。
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