へ〜んしん(苦笑)

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 夜通しの仕事が終わり家に戻ったのは朝7時過ぎ。  ヘトヘトに疲れていたが、大事な用事は早めに片付けてしまいたいのが俺の性分。  東京芸大ピアノ科の教授である藤木に電話する。  藤木は大学時代の友人。  いっしょに赤坂のクラブでピアノのバイトをしたり、他の楽器を弾く友人達とバンドを組んで、イベント会場や大型商業施設などで演奏した音楽仲間だ。  彼は女好きで、常に複数の恋人やガールフレンドと交際していて、しばしばデートの約束をダブルブッキングして、俺は何度となく彼の代理で緊急出動させられた。 「藤木の奴、急に熱出してさ。ごめん。代わりに俺、夕食ご馳走するから許してやって。」 などと藤木のガールフレンドにテキトーな言い訳して金まで使う始末。  俺ばかりが損していた。  そんな一方的な恩義も20年近い時を経て、ついに役立つ時が来たのだ。
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