6章. ラストターゲット

2/8
前へ
/35ページ
次へ
〜クラブ ビューティーナイト〜 開店前の店は、ホステスもまだ来ていない。 ママがボトルとオードブルを運んで来た。 「すみません。ちょっと早く来すぎちゃって」 「いいわよ美夜さん、気にしないで」 蔵崎満から、珍しく昼間に電話があり、盛大に飲もうとの誘いであった。 「何だか蔵ちゃん、ハイテンションだったけど、何かあったの?」 「あった…って言うんじゃなくて、噂だけど、明日大きな仕事があるらしいのよ」 「ヤクザの大きな仕事って…」 目を合わせた2人。 「そうゆう事ね。明日動けないくらい飲ませてやるわ!」 その時、玄関をノックする音がした。 「あら?蔵ちゃんかしら」 ママが降りて行く。 美夜が咲に、明日の情報を流そうと携帯を手にした時、咲からの着信が入った。 「これが双子ってやつかな?どうしたの咲?」 「何言ってんのよ美夜、今どこ?」 「いつもの店だけど?」 ママの声がした。 「美夜さ〜ん、貴女への贈り物よ❣️」 その声は、咲にも聞こえた。 「美夜、受け取っちゃダメ❗️、犯人からよ」 咄嗟に携帯を置いて動く美夜。 「ママこれを!早くそれを奥に投げて❗️」 「えっ?」「カチッ」 箱から、乾いた音がした。 「早く❗️」 躊躇(ちゅうちょ)するママへ、美夜が走る。 箱を奪い取って奥へ投げ、鍵をかけた。 「ママ!ママ、ママ!しっかりして❗️」 その声を聞いていた咲が叫ぶ。 「美夜、美夜!美夜ッ❗️、クソッ!」 電話を切り、緊急連絡用の電話に手を伸ばす。 「ダメよ」 その手を、ヴェロニカが押さえた。 「何するのよ、美夜が危ないんだから、邪魔しないで❗️」 「ダメよ。今突入したらダメ。行きましょ!」 バッグを持って出て行くヴェロニカ。 慌てて後に続く咲。 台場から、咲の車が飛び出した。 「パトライト要らないの?」 「そこに入ってるわ」 「あ、あった。よし」 窓を開けて、取り付けた。 パトライトが光り、サイレンが鳴り響く。 「おお!本格的だわ」 紗夜からの電話が鳴る。 渡されたヴェロニカが出る。 「はい、咲さんの代わりです」 「ヴェ、ヴェロニカさん?なんで?」 「そんな気がしてね〜。美夜さんのいるクラブへ向かってるわ」 「私達も戻る途中だから、現地へ向かうと伝えてください」 電話が切れた。 「紗夜さん達も、現地に向かうって」 「ヴェロニカさん、さっきはごめんなさい。気が動転してしまって」 「身内なら当然よ。だから私はいたの。タワーみたいに、二次災害を出さない為にね」 ヴェロニカは、剣城の隠し部屋の写真を見て、美夜が狙われる事を、確信していたのである。 30分足らずで着いた。 クラブの前には、何人かが集まっている。 2人に気付いた蔵崎。 「よぅ、美夜か咲さん。様子がおかしいんだ」 「咲よ!美夜は中」 咲がヴェロニカを見る。 時計を確認するヴェロニカ。 「もう大丈夫ね」 「みんなどいて!」 拳銃を構える咲。 慌てて皆んなが下がる。 「バン!バン!」 鍵穴を狙って2発撃つ。 体当たりの構えの咲を、蔵崎が止める。 「何すんのよ!」 と同時に、彼がドアを引いて開けた。 「あら?引くのね💧」 などと感心している場合ではない。 急いで中へ入る。 「えっ?」 防護マスクを被った2人がいた。 ヴェロニカを見て、マスクを外す。 「咲、来てくれたのね」 「いらっしゃいませ」 そこへ、紗夜と豊川も着いた。 「良かった〜。大丈夫だったのね」 ヴェロニカに気付き、紗夜が理解した。 (あの時咲さんは、「あんたまでそんなことを」と言った。ヴェロニカさんが忠告を…) 「ヴェロニカさん、ありがとうございました。おかげで助かったわ」 美夜が、中和剤の入ったスプレーを見せた。 改めて世界最高頭脳の実力を、実感した紗夜と咲であった。 「さてと、咲さん。まだ終わりじゃないわよ。本部へ戻りましょ」 「そうね、豊川さん、後はよろしく」 「おぉ、もうすぐチームが来る。任せろ」 「紗夜、帰るわよ」 車に戻る3人。 後ろで、騒ぎ出す声が聞こえた。 「全く、誰よこんなイタズラして!」 助手席のドアに付いたパトライトを見て、咲がボヤく。 「えっ💦ほ、ほんとよね〜困ったもんだわ」 (そう言えば…上か!間違えたわ) 外して乗り込むヴェロニカ。 笑いを堪える紗夜であった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加