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〜クラブ ビューティーナイト〜
開店前の店は、ホステスもまだ来ていない。
ママがボトルとオードブルを運んで来た。
「すみません。ちょっと早く来すぎちゃって」
「いいわよ美夜さん、気にしないで」
蔵崎満から、珍しく昼間に電話があり、盛大に飲もうとの誘いであった。
「何だか蔵ちゃん、ハイテンションだったけど、何かあったの?」
「あった…って言うんじゃなくて、噂だけど、明日大きな仕事があるらしいのよ」
「ヤクザの大きな仕事って…」
目を合わせた2人。
「そうゆう事ね。明日動けないくらい飲ませてやるわ!」
その時、玄関をノックする音がした。
「あら?蔵ちゃんかしら」
ママが降りて行く。
美夜が咲に、明日の情報を流そうと携帯を手にした時、咲からの着信が入った。
「これが双子ってやつかな?どうしたの咲?」
「何言ってんのよ美夜、今どこ?」
「いつもの店だけど?」
ママの声がした。
「美夜さ〜ん、貴女への贈り物よ❣️」
その声は、咲にも聞こえた。
「美夜、受け取っちゃダメ❗️、犯人からよ」
咄嗟に携帯を置いて動く美夜。
「ママこれを!早くそれを奥に投げて❗️」
「えっ?」「カチッ」
箱から、乾いた音がした。
「早く❗️」
躊躇するママへ、美夜が走る。
箱を奪い取って奥へ投げ、鍵をかけた。
「ママ!ママ、ママ!しっかりして❗️」
その声を聞いていた咲が叫ぶ。
「美夜、美夜!美夜ッ❗️、クソッ!」
電話を切り、緊急連絡用の電話に手を伸ばす。
「ダメよ」
その手を、ヴェロニカが押さえた。
「何するのよ、美夜が危ないんだから、邪魔しないで❗️」
「ダメよ。今突入したらダメ。行きましょ!」
バッグを持って出て行くヴェロニカ。
慌てて後に続く咲。
台場から、咲の車が飛び出した。
「パトライト要らないの?」
「そこに入ってるわ」
「あ、あった。よし」
窓を開けて、取り付けた。
パトライトが光り、サイレンが鳴り響く。
「おお!本格的だわ」
紗夜からの電話が鳴る。
渡されたヴェロニカが出る。
「はい、咲さんの代わりです」
「ヴェ、ヴェロニカさん?なんで?」
「そんな気がしてね〜。美夜さんのいるクラブへ向かってるわ」
「私達も戻る途中だから、現地へ向かうと伝えてください」
電話が切れた。
「紗夜さん達も、現地に向かうって」
「ヴェロニカさん、さっきはごめんなさい。気が動転してしまって」
「身内なら当然よ。だから私はいたの。タワーみたいに、二次災害を出さない為にね」
ヴェロニカは、剣城の隠し部屋の写真を見て、美夜が狙われる事を、確信していたのである。
30分足らずで着いた。
クラブの前には、何人かが集まっている。
2人に気付いた蔵崎。
「よぅ、美夜か咲さん。様子がおかしいんだ」
「咲よ!美夜は中」
咲がヴェロニカを見る。
時計を確認するヴェロニカ。
「もう大丈夫ね」
「みんなどいて!」
拳銃を構える咲。
慌てて皆んなが下がる。
「バン!バン!」
鍵穴を狙って2発撃つ。
体当たりの構えの咲を、蔵崎が止める。
「何すんのよ!」
と同時に、彼がドアを引いて開けた。
「あら?引くのね💧」
などと感心している場合ではない。
急いで中へ入る。
「えっ?」
防護マスクを被った2人がいた。
ヴェロニカを見て、マスクを外す。
「咲、来てくれたのね」
「いらっしゃいませ」
そこへ、紗夜と豊川も着いた。
「良かった〜。大丈夫だったのね」
ヴェロニカに気付き、紗夜が理解した。
(あの時咲さんは、「あんたまでそんなことを」と言った。ヴェロニカさんが忠告を…)
「ヴェロニカさん、ありがとうございました。おかげで助かったわ」
美夜が、中和剤の入ったスプレーを見せた。
改めて世界最高頭脳の実力を、実感した紗夜と咲であった。
「さてと、咲さん。まだ終わりじゃないわよ。本部へ戻りましょ」
「そうね、豊川さん、後はよろしく」
「おぉ、もうすぐチームが来る。任せろ」
「紗夜、帰るわよ」
車に戻る3人。
後ろで、騒ぎ出す声が聞こえた。
「全く、誰よこんなイタズラして!」
助手席のドアに付いたパトライトを見て、咲がボヤく。
「えっ💦ほ、ほんとよね〜困ったもんだわ」
(そう言えば…上か!間違えたわ)
外して乗り込むヴェロニカ。
笑いを堪える紗夜であった。
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