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〜警視庁特別対策本部〜
3人が戻るのを待っていた昴達。
「無事で良かったな、咲」
「富士本部長、ヴェロニカさんがいなかったら、美夜だけでなく、大勢の被害者を出すところでした。私情は禁物と、忠告されたばかりなのに…」
「我々刑事も人間だ。私情を無視できる様な刑事じゃ、人の痛みや苦しみも分からない。だから、それでいいんだよ。そこをカバーするために仲間がいるんだ」
「そうだぜ、俺だってあれが紗夜だったら、例えトイレの最中でも、そのまんま飛び出すぜ」
「淳、それだけはやめて💧」
「アハハッ。ありがとう淳一」
皆んなが笑う中、ヴェロニカだけは、険しい顔でモニターを見ていた。
「昴ちゃん、これはいつから?」
その言葉に、全員がモニターを見た。
真っ黒な画面に、沢山の赤い点が動いていた。
「ついさっきからです。例の衛星船舶監視システムが作動を始めました」
「国枝剣城ね」
紗夜が確信する。
「やはり、ラブの読み通りだわ」
「ラブさんが?」
「あの研究所で、所長級の職位を貰ってるラブは、当然このシステムの開発内容も知っているのよ」
「何なのこのシステムって?」
「貨物船を対象に、コンテナレベルのデータが自動登録され、荷出し、荷受け、貨物、全ての情報と、航路を監視できる」
「つまり、違法な貨物や寄港を、高精度で監視することができ、密輸や密航対策のシステムってことですね」
「表向きはね、昴の言うのが開発目的。でもまだ中国をはじめ、東南アジアの国々が認めていないのよね」
それだけ違法な貨物や取引が、国レベルで行われていると言うことである。
「表向きはってことは、裏があるのよね?」
「今回、このシステムを蛇心が購入しようとした。更に、密航で散々甘い汁を吸ってきた、渋川法務大臣が推し進めた理由が裏の話し。このシステムを持っていれば、コンテナのデータを書き換えることができるのよ。極端に言えば、船一隻を消すこともできちゃうのよね」
「でも、認可されなきゃ意味ないじゃん」
「確かに。でも、国際的に問題視されていて、アメリカ、日本、ヨーロッパ諸国が賛成してるから、時間の問題ね。蛇心の狙いは、導入出来てからの利用より、闇でこのシステム自体を組織や国に、先に売りつけることなのよ」
「なるほど。闇の組織なら、絶対買うわね」
「しかし。国枝剣城、愛染由香里、雅也の復讐によって、蛇心や大臣たちの計画は潰された。ラブの読みでは、この赤い点は、剣城に協力してた蛇心の船。アイ、東京を中心に、海図を重ねて見てくれる?」
「何てこった」
「今、この赤い点が全て東京へ向かっている。そして、そのシステムが今動いている。咲さん、あなたの写真もあの壁にあったわよね。でも私は美夜さんにしか、中和剤を持たせなかった」
「私は、ターゲットじゃないってこと?」
「その質問は微妙。でも暗殺リストには入っていない。実は、これは私じゃなく、ラブが気付いたのよね、ハハ」
その時。
「ん?誰これ?」
咲の携帯に電話がかかってきた。
「咲だけど、あんた誰よ?」
「愛想悪いですね、鳳来咲」
「剣城❗️」
ハンズフリーに切り替える咲。
「皆さんお揃いかな?美夜さんは残念でした。まさか先手を打たれるとは。彼女が死んで、残されたあなたが、一生悲しんで、悔やんで、私を恨んで生きる。それがお前たち2人への復讐だったんだけどね」
「ふざけんな❗️あんた達がやってるのは、奴らと同じ殺人よ❗️国枝部長や友恵さんは、そんなこと望んでなんかいない」
「お決まりのセリフですね。では聞く。父と母が、奴等を恨んでいないなんて、あんたにわかるのか?分かるわけないよね。父と母を殺されて、警察にいながら、その恨みを晴らそうとさえしないあんたにはな❗️」
咲が…言い返せなかった。
彼の言う通りであったから。
美夜は不動産会社にいながらも、危険な夜の街で、手がかりを探していた。
でも自分は、警察にいながら、調べようとさえせず、ただ忘れて逃げて来たのである。
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