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〜新宿〜
飛鳥組傘下鬼島組本部。
組員7名が、テレビの前で呆然としていた。
大阪の組長襲撃事件である。
「えらいことになっちまったな…」
「まさか、組長が殺られるとは」
「いったいどこの組の仕業だ?」
背後で、入り口のドアが開いた。
黒いスウェットの2人が入る。
「何か御用ですか?」
若い組員が出迎える。
「你会怎么做?(どうする?)」
「因为这是工作(仕事だからな)」
こちらを向いたまま会話する2人。
(マジ!今度は中国人かよ💦)
「に、ニーハオ」
それしか知らない中国語。
その異様な雰囲気に、他の組員も振り向く。
「何だぁお前ら?」
慌てて彼が2人に背を向ける。
「中国人ですよ💦日本語じゃダメ…」
そこで、彼の言葉が途切れた。
後頭部つけ根からの凶器が、額から突き出る。
不意の出来事に、理解が追いつかない組員。
それへ、もう1人が跳んだ。
両手に持った鋭い凶器が光る。
僅か1分足らずで、残りの6名を仕留めた。
倒れた男のシャツで、凶器に付いた血を拭き取り、懐にしまう。
「弱いな」
「ヤクザはこんなものか」
呟きながら、出て行く2人。
約2時間後、近所の商店街の会長が相談に寄り、第一発見者となった。
〜飛鳥組本部ビル〜
咲の連絡で、その襲撃を知った神。
それでも彼は、動かなかった。
厳重な警戒体制を敷き、警察がそれを取り巻いていた。
更には各社報道機関も大勢詰めかけ、言わば3重の壁で守られている様なものである。
「組長、時間です」
右腕である、近藤義史が、複数のモニター前に座る神に告げた。
「さて、やるか。繋げ」
傘下の組長達が、各モニターに映る。
「みんなご苦労」
全員が軽くうなずく。
「知っての通り、親父は死んだ。俺は古い形には拘らない。今後は俺についてきてくれ。大阪は親父から、後目は澄川にと聞いている。澄川、よろしく頼む。文句は後でいくらでも聞いてやるが、今は正体不明の敵が先だ」
ひと区切り間をとる。
「組長…いや、おじきの葬いはどうする?」
「敵を潰してからだ。それまでは、冷凍保存しておく。親父以外は、家族があるだろうから止めはしねぇ。費用は必要なだけ組から出してやれ。補償金もな…」
「冷凍保存だと?気は確かか、神?」
「組長と呼べ❗️」
近藤が一喝する。
「いや、好きに呼べばいいさ。それより、今葬儀をして組員を集める方が、正気じゃねぇ❗️敵に飛鳥組殲滅のチャンスをやるってぇのか⁉️」
さすがに、反論は出ない。
もとより、神への信頼は皆厚い。
「とにかく!皆んな気を付けろ。死んだら殺すぞ、いいかぁ❗️」
「オスッ❗️」「オゥ❗️」「御意❗️」
「俺の読みじゃ、敵は恐らく蛇心。それに、国内裏社会の誰かが繋がってやがる。そして、狙いは東京だ。情報は全て俺か近藤へ直ぐに知らせてくれ。以上だ!」
全員が立ち上がり、神に深礼をした。
モニターを切る。
「ふぇ〜慣れねぇことやると、疲れるぜ」
「お疲れ様です、組長」
「おいおい、頼むから神にしてくれ、近藤」
ニヤリと笑い合う2人。
しかし、サングラスの中の瞳は、熱く燃えたぎっていた。
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