2章. 始まり

3/6
前へ
/35ページ
次へ
〜新宿〜 飛鳥組傘下鬼島組本部。 組員7名が、テレビの前で呆然としていた。 大阪の組長襲撃事件である。 「えらいことになっちまったな…」 「まさか、組長が殺られるとは」 「いったいどこの組の仕業だ?」 背後で、入り口のドアが開いた。 黒いスウェットの2人が入る。 「何か御用ですか?」 若い組員が出迎える。 「你会怎么做?(どうする?)」 「因为这是工作(仕事だからな)」 こちらを向いたまま会話する2人。 (マジ!今度は中国人かよ💦) 「に、ニーハオ」 それしか知らない中国語。 その異様な雰囲気に、他の組員も振り向く。 「何だぁお前ら?」 慌てて彼が2人に背を向ける。 「中国人ですよ💦日本語じゃダメ…」 そこで、彼の言葉が途切れた。 後頭部つけ根からの凶器が、額から突き出る。 不意の出来事に、理解が追いつかない組員。 それへ、もう1人が跳んだ。 両手に持った鋭い凶器が光る。 僅か1分足らずで、残りの6名を仕留めた。 倒れた男のシャツで、凶器に付いた血を拭き取り、懐にしまう。 「弱いな」 「ヤクザはこんなものか」 呟きながら、出て行く2人。 約2時間後、近所の商店街の会長が相談に寄り、第一発見者となった。 〜飛鳥組本部ビル〜 咲の連絡で、その襲撃を知った(じん)。 それでも彼は、動かなかった。 厳重な警戒体制を敷き、警察がそれを取り巻いていた。 更には各社報道機関も大勢詰めかけ、言わば3重の壁で守られている様なものである。 「組長、時間です」 右腕である、近藤義史(こんどうよしふみ)が、複数のモニター前に座る神に告げた。 「さて、やるか。繋げ」 傘下の組長達が、各モニターに映る。 「みんなご苦労」 全員が軽くうなずく。 「知っての通り、親父(おやじ)は死んだ。俺は古い形には(こだわ)らない。今後は俺についてきてくれ。大阪は親父(おやじ)から、後目は澄川(すみかわ)にと聞いている。澄川、よろしく頼む。文句は後でいくらでも聞いてやるが、今は正体不明の敵が先だ」 ひと区切り間をとる。 「組長…いや、おじきの(とむら)いはどうする?」 「敵を潰してからだ。それまでは、冷凍保存しておく。親父(おやじ)以外は、家族があるだろうから止めはしねぇ。費用は必要なだけ組から出してやれ。補償金もな…」 「冷凍保存だと?気は確かか、神?」 「組長と呼べ❗️」 近藤が一喝する。 「いや、好きに呼べばいいさ。それより、今葬儀をして組員を集める方が、正気じゃねぇ❗️敵に飛鳥組殲滅のチャンスをやるってぇのか⁉️」 さすがに、反論は出ない。 もとより、神への信頼は皆厚い。 「とにかく!皆んな気を付けろ。死んだら殺すぞ、いいかぁ❗️」 「オスッ❗️」「オゥ❗️」「御意❗️」 「俺の読みじゃ、敵は恐らく蛇心。それに、国内裏社会の誰かが繋がってやがる。そして、狙いは東京だ。情報は全て俺か近藤へ直ぐに知らせてくれ。以上だ!」 全員が立ち上がり、神に深礼をした。 モニターを切る。 「ふぇ〜慣れねぇことやると、疲れるぜ」 「お疲れ様です、組長」 「おいおい、頼むから神にしてくれ、近藤」 ニヤリと笑い合う2人。 しかし、サングラスの中の瞳は、熱く燃えたぎっていた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加