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いろいろなことが突然に・・・・
「この書類にサインして」
社長室にいきなり現れた水瀬から手渡された書類。
その書類から目を逸らすことが出来ない。
「どうしても?」
「他に頼める人いないし」
視線を下げた水瀬が学生時代のように、ちょっとだけ幼く見えた。
「どうしても?そもそもオレでいいわけ?」
「ダメなら湊に頼む。」
水瀬が下ろしていた掌をキツク握りこむのが見えた。
「日和がいるだろ、湊には・・・。」
「だったら・・・・」
顔を上げた水瀬の視線は強い。
「これ、預からせてくれない?」
「なんで?」
「これしか選択肢ってホントにないか?」
「他にあるわけないでしょ?柊亜を巻き込むようで悪いけど、サインだけでいいから。」
「久しぶりだな、葵から名前で呼ばれるの」
葵の視線が揺れる。
「今はそこ、関係ないから」
「あるに決まってるだろ。なんなら、俺と結婚するか?そうすれば・・・・」
「何、訳わかんないこと言い出してるの。もういい。書類、返して」
葵は俺のデスクのギリギリの所まで距離を詰めて、手を差し出した。
「返すかよ。そんなことしたら、即、手術だろうが」
「だから、宗像は関係ないことなの」
「今の俺なら、葵、お前をちゃんと守れる」
「いい加減にして。昔のことでしょ?」
睨み合ったけど、視線を先に外したのは葵だった。
「サインしといて」
捨て台詞のように言うと、背を向けて部屋を出ていく。
その後ろ姿を見ながら、昔からハイヒールを好んで履いてたなと要らないことを思い出す。俺と湊が背が高いから、少しでも近づけるようにと、小柄な葵が言っていたっけ。
葵、俺、今度こそ、本気出していい?
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