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『今、どこにいる?』
また、だ。
溜め息をついた。
私がやっているSNSで最近知り合ったフォロワーがやたら懐いていてメッセージを送ってくるのだが、控えめに言って鬱陶しいのだ。
鬱陶しいとは言い過ぎと言われそうだが、一日に10通のメッセージを一気に送ってこられたら鬱陶しい以外の言葉も出てこないだろう。
なにか打とうとしても、向こうからまくしたてるようなメッセージがポンポン届いたらゲンナリする。
これじゃあ、言葉のドッチボールだ。
溜め息をついたのも束の間、フォロワーである「まいまい」からまたメッセージが届く。
『プレゼントを渡したいから、会いたい』
『今、どこにいるの?』
『学校?』
『でも、もう学校終わってるよね?』
『ちなみに私は渋沢市にいるよ』
『さっきまで浅原市にいたけどね』
『浅原市でプレゼント買っていたから』
『あ、プレゼントはこれで』
ご丁寧に写真まで送ってきた。
黄色の花菱草のブーケだが、わざわざ浅原市まで買ってきたのか。
なんか、きもち、わるいな。
背筋が寒くなってきた。
今すぐ家に帰ってお風呂に入ろう。
そうしたら、温まるはずだ。
家に向かうと、見知らぬ少女が家の前に立っていた。
黒髪のツインテールの可愛らしい雰囲気の少女だが、知り合いにはいない。
訝しげに見知らぬ少女を見つめていたら、少女は満面の笑みで私に駆け寄ってきた。
『わあ!やっと会えたね!』
やっと?意味が分からない。
『あれ?もしかしてだれか分かりませんか?』
キョトンとした顔の少女は黄色の花菱草を持っていた。
花菱草。まさか。
『やっと分かった?』
少女がそう聞いてきたから、無言で頷く。
『知ってる?黄色の花菱草の花言葉はね』
そう言いながら、少女は距離を詰める。
少女が怖くなってきたから、後ずさる。
『私を、拒絶しないで』
そう言って少女は泣き崩れ、床に伏した。
花菱草は固く握られたままだった。
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