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第一章 卵サンドとブランディング
神社を覆う鬱蒼とした木々から、蝉時雨が降り注ぐ。神社の鳥居を見上げる私は、麦わら帽子をかぶり、風船を手にしていた。
赤い風船は、青い空を背景に、ゆらゆらと風に吹かれて揺れている。それらはすべて、いつか見た景色。どうやら私は、懐かしい記憶を幼い足取りで辿っているようだ。
こぢんまりとして可愛らしい猫三神社を過ぎれば、『またたび横丁』の看板を掲げたゲートが見えてくる。あの頃は、夢の国の入り口をくぐるかのように、胸が踊ったものだ。
夏になると必ず行列ができるかき氷屋さん。
揚げたての唐揚げが美味しいお肉屋さん。
ちょっと厳ついけど目利きの大将がいる魚屋さん。
幼稚園の園服と鞄を買った制服屋さん。
絵本や色鉛筆が売っている本屋さん。
夜になると提灯が点る焼き鳥屋さん。
毎年誕生日ケーキを注文するケーキ屋さん。
地元の商店街には、子供時代のわくわくとどきどきが全部詰まっていると言ってもいい。
中でも、サンドイッチ屋さんの記憶と味は、DNAレベルで私に刻まれていた。
思い出すのは、断面が美しい萌え断サンドイッチでもなければ、おしゃれでレトロなサンドウィッチでもない。家庭的で素朴な、誰もが知っているサンドイッチだった。
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