53人が本棚に入れています
本棚に追加
【第一部】プロローグ 「流れ出す生命」
五メートル先から放たれた二十二口径の金属の塊。
その塊は少女の頭部を通り抜ける際に、何十億という組織を破壊した。
それにより彼女は笑うことも、泣くことも、僕に語り掛けることも、たった今不可能となった。
撃ち抜かれたその小さな頭から、明確な意味を持ち生命は流れ出て行く。
あの日から一年間。背だって伸びたし、たくさん笑うようになっていた。そうだ……この子は今朝。初潮を迎えたばかりだった。
手を伸ばしても届かない……どうしてこんなことになってしまったのだろう。
引き金を引いた男は、何やら一言呟いて何処かへ行ってしまった。僕ももうこれ以上は、何も考えられなくなって来ていた。
少女と共に暮らした家は、すぐ隣で巨大な炎に包まれていた。その炎が僕の元まで延び、いっそのこと焼き殺してくれればよかった。
最初のコメントを投稿しよう!