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「、、、それはないと思うよ。
奥さんにそっちの魅力は感じないって言ってたし。
「男の身体ほどには性欲を感じない、ということかと。
あの女性が奥様ならばまだお若い、間違いなく夜の営みはあるでしょう」
「じゃ、俺とは遊びだったわけ?
だとしたら最初っからセフレとして口説くはずだろ?」
「彼にとって君はセフレです」
「ええっ」
「始めからそう言ってしまうのは偽善者である彼のプライドが許さず、真面目な子ほど落とせないので恋愛関係という入口を繕っただけです」
「俺ちゃんと確かめたもんっ。
『セフレだったのか』って。
そしたら浦霧さん、
『セフレなら一緒に住みたいなんて思わないよ』って。
『タイミングをみて必ず離婚するか、、、』」
「その『タイミング』は永遠に来ません」
「な、、、っ」
「ま、茄乃君を愛してるのは確かでしょう。
ですがそれは遊び程度にであって、奥さまとは一線を画しています」
「浦霧さんは、、、俺を傷つけたくなかったって。
本当の彼は誠実で紳士的で、、、」
「結果として君は傷ついたのでしょう?
彼は人の人生に関わる重大な隠し事をし、嘘をついた。
別れた後はどうですか?
面倒な手続きを君に押し付け、奥様と優雅な休日を過ごしている。
そんな彼は誠実で紳士的でしょうか」
「、、、、」
瀬髙は何の関わりもない自分こそが茄乃を傷つけている不快感で額に嫌な汗を滲ませた。
しばらく黙っていた茄乃は、
「そうだよ。俺は怖いんだよ。
別れた後も浦霧さんの本当の姿を認めることが。
そもそも本当の浦霧さんなんて知らなかったわけだし」
「茄乃君の知る浦霧さんは幻想です。
不倫する夫の大抵は服からペットに至るまで奥様が選び、甘い囁きや洒落た店をレクチャーされているものです。
ゆえに茄乃君が好きになったのは奥様の作品とも言えます。
見も知らぬ人妻の作品にうっかり惚れてしまったのですから嘆く必要はありません。
安心して幻想から目覚めちゃって下さい。
それと、、、」
瀬髙は、車を走らせてからずっと言おうか言うまいか迷っていた事を決心した。
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