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茄乃はと言えばグラスにストローを差し、口をつけたそのままの姿勢で上目遣いに瀬髙を見ている。
「瀬髙さんてこっち側の人だったのかー。
だからさっき営業車ん中で俺のほっぺたと付き合いたい、なんて口走ってたんだ」
罪もなく しっとりと据える目は眩しいほど愛らしく濡れ、『ほっぺた』という言い回しだけでも瀬髙の心は半殺しにされていたのだが、何よりもストローを咥える茄乃の濡れた唇が扇情的で、目を逸らさずにはいられない。
「ごほっ、、、まぁ。そう言うことです」
はやくも乾き始めた口内に再びグラスを取った。
「ふーん。
周りが放っとかないくらいの見た目なのにね」
「、、、、」
「瀬髙さんて、下の名前なんていうの?」
「、、、野津帆、と申します」
茄乃は何かを思い付いたように目を見開き、
「せーたかで、のっぽだからノヅホ?」
そこへ大皿に乗せられたフルーツサンドが運ばれてくると、茄乃はようやくストローから口を離し少し仰け反った。
「わ。こんなにたくさん」
「茄乃くん、お腹が減ってると言ってたので、たくさん食べて頂こうと」
「、、、、」
茄乃は色鮮やかに散りばめられたキウイやイチゴ、桃の断面を眺め、そのまま動かずにいる。
「どうしました?」
瀬髙の言葉にはっとして手を出し、カットされた一片を端から頬張ると、すぐに肩をすくめて目を閉じてしまった。
「美味しいですか?」
こくこくと頷く茄乃に瀬髙は添えられた絞りタオルを広げて差し出し、目を細める。
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