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そんな紳士と別れることになったという
紙無 茄乃といえば、やや窶れた感はあるものの愛嬌ある顔立ちは先日と変わらなく血色も良い。
唯一気になることと言えば目の下にある妙な黒ずみだったが、それを心労や寝不足によるクマ、と言うのには若干の違和感を覚えるほど顔色は健康そのものだった。
つまりそれほど彼は『若い』ということだ、
と瀬髙は思った。
傷つけられたにしても、さほど後を引かずに立ち直るだろう。
「では早速物件をピックアップしましょう。
紙無さまが お住まいに求める優先順位をお聞かせ下さい。
先ずは家賃の上限からですね」
瀬髙は手元のタブレットに表示させた物件リストに意識を戻した。
「えっと5万、、、くらいかな。
そんなに無いのわかってるけど、駅から離れててもいいし、陽当たりも気にしないし築年数とかも拘わらないからさ」
「でしたら即入居できる物件が三つほどございますね」
画面をスライドさせながらプロの目が見て比較的良しとする物件を素早く選択して伝えた。
「今から見れる?」
「あっと、、、今からですか」
瀬髙は壁に掛かった時計を見た。
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