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「それでも少しは賑やかな方が、、、」
「周りが賑やかだと自分だけ世の中から取り残されてるみたいに感じる。
実際ゲイで女々しい俺の事なんか誰も気に留めないだろうし」
『女々しい』などという言葉を発する茄乃が女々しいのはその通りで、そのあたりを意識してる彼のネガティブさ、女性っぽい顔や身体つきの可愛さに、瀬髙の心はつい揺すられてしまった。
「そんなことは。
僕から見ても紙無さまはとても、、、」
「、、、ばないで」
「え?」
「俺の事、名字で呼ばないでくれる?
ちゃんと茄乃って名前があるんだから」
「ですが」
「ナ・ノ。
名前の由来は めちゃくちゃ小さく生まれたから背も伸びないだろうって。
センチでもなくてミリでもなくてナノミリメートルのナノ。
そう呼んでよ、それくらいいいでしょ?
身内以外で俺のこと下の名前で呼んでくれる人、もういなくなっちゃったんだから。
部屋の契約が済んだら二度と会うこともない間柄なんだし」
「しかし」
「あそ。嫌ならいいよ。
瀬髙さん、浦霧さんには いろいろ注文つけられてたけど、はいはいって受けてたよね。
それって家賃の高い大口の客だったからでしょ?
どうせ俺なんか、、、、」
「失礼しました、茄乃さん」
「さんづけは嫌かな」
「では茄乃君。、、、でよろしいですかね」
「ありがと。ごめんね、無理言って」
それでも茄乃は外に目を遣ったまま不服そうに呟いたが、しばらくして交差点の先頭で赤信号により車を停車させた時突然、『うう』と泣き出した。
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