怪盗クローバー

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「まったく。犯行予告だと?。警察も舐められたものだな。今何世紀だと思ってるんだ。」オダマキ警部はそう話しながら美術館の廊下を歩いていた。 「まあまあ、どうせ悪戯の類でしょう。現代社会じゃ、オフィスや住宅街には犯罪防止用の監視カメラがネズミ一匹も通さない様に付けられている。さらにネットの普及で見つかれば即拡散。にもかかわらず我々警察は、予告が来ているからその対処をしなければならない。警察も楽じゃないですよね。」近くを歩いていたスイセン刑事はそう言いながら扉の前まで歩いた。開けると中央に本日の目玉であるレッドダイヤが居座っていた。  オダマキ警部は予告状を取り出し読んだ。「明日夜七時三十分。東部美術館のレッドダイヤを盗みに参上する。怪盗クローバー…。この予告状には一切指紋が付いていなかったと。正に神出鬼没か。」 「きっと何かトリックあるんですよ。」そう言って無理に納得するしか無かった。    オダマキ警部が美術館の監視室でスイセン刑事からの連絡を受けたの犯行予告の十分前だった。「全員配置に着きました。抜かりはありません。」 「こっちも全ての監視カメラに異常なし。ふん、予告状とかふざけたマネをするからこうなるんだ。この状況で犯行など不可能だ。後はゆっくり身元を洗いだして逮捕するとしよう。」オダマキ警部は自身有り気に答えた。  予告一分前。薄暗い部屋でレッドダイヤの警備をする二人の警官の元に別の場所を見張ってる筈のスイセン刑事から連絡が来た。 「階段の影に不審な男あり。上に登って行ったぞ。警戒しろよ。」 「なんだと、了解した。」そう言って二人の警官は階段の方を向いた。  だが視線の先に居たのはスイセン刑事だった。二人は何か言葉を発しようとしたが睡眠ガスを顔に吹き付けられて倒れた。 「ふっ、甘いな。」スイセン刑事は顔に手を当ててその仮面を外した。  怪盗クローバーだった。整った顔、黒くてサラサラの髪、青のシャツ、クローバーの葉の模様が付いた白いジャケットとズボン。  全ては計画通りだった。まず今日の朝、警察に出勤するスイセン刑事をトイレで十二時間以上起きない睡眠スプレーを吹きかけて入れ替わった。その後オダマキ警部から監視室の鍵を盗み、昼の時点で用意していた別の監視映像を流し込み、自分が侵入した痕跡も消した。夜になると見張っていた警官二人にあらかじめ録音していたテープを電話で流し込んだ。そして自分はその間に階段を悠々と上がりタイミングよく二人を眠らせた。  レッドダイヤを手にした怪盗クローバーは天井の窓ガラスを鉄製のブーメランで穴を開け、伸縮ワイヤーを使って外に出た。 「おい、見ろよあれ。人がいるぞ。」  外の警備をしていた警官が気づいた。オダマキ警部も監視室から出てきた。  怪盗クローバーは高々とレッドダイヤを掲げた。 「残念だったね。警部さん達。予告通りレッドダイヤは頂いていくよ。」 「くそ。やつを撃て。」 「何を言ってるのですかオダマキ警部。正当防衛は通じませんよ。」周りの警官が押さえた。 「ふふふっ、さらば。」指パッチンを一回。怪盗クローバーは煙と共に消えた。この事件後、現代に突如現れた怪盗は世間に広まった。これが全ての始まりだった。
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