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ストレートな方法では当たらない。あるいはあの盾を突き破るだけの威力があれば崩せるか。しかしそれほどの電気をまともに食らえば対象も無事では済まない。
そう考えた矢先、目に映った光景にカインは固まった。
芝生の上に鎮座していた滑り台や何本もの鉄棒が、ふよふよと浮遊しながら照準を合わせるようにこちらを向いた。あれを食らうのは……まずい。
思っている間にヒュンヒュンと相次いで飛んでくる。鉄塊から逃げるように走り出すが、遊具たちもスピードを保ったまま方向転換し、敵を認知した誘導ミサイルさながらカインを追ってくる。
肩越しに電力で軌道を逸らして広い校庭を走り回るのは、思いの外きつかった。能力の支配下から外れた遊具は勢いを保ったまま芝生へと突き刺さっていく。
「これで終わり……」
五本目の鉄棒がどすっと地面に落ちるのを見て、力を抜きかけたカインの身体が硬直する。
横倒しになった滑り台の陰から鉄の棒が現れた。距離を目測するより早く、襲い掛かってくる鉄棒の軌道を反射的に逸らす――つもりが手元が狂った。
鉄塊は地面ではなく斜め上方を目指して勢いよく飛んでいく。その直線上にはロイの姿。
しかも彼はあらぬ方向を向いて鉄棒の接近に気づいていない。
「おいっ!」
カインが声を上げても男は無反応だ。
「クソっ」
カインは飛んでいく鉄棒を追い、確実にコントロールできる射程圏内に捉えて電撃を飛ばした。
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