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「遅刻だ」 新しく配属された班の指揮官であるウィル・エヴァンスは、カインが肩を揺らして現れると同時にそう断罪した。 「すみません、ちょっと……トラブルに出くわして……」 カインは息を切らしながらそう言い訳する。 ウィルは五十歳前後でグレーのスーツを着こなす紳士然とした男だった。一八〇センチのカインより五センチほど低く、身体もそれほど剛健には見えないが、彼が纏うオーラにはどんな屈強な男でも圧倒されそうな雰囲気があった。これまで一緒に仕事をしたことはないが、彼が有能な指揮官であることは周知の事実だ。 「何があった?」 「コンビニ強盗に遭遇して、交番まで送り届けていました」 「言い訳にしちゃ面白みがねえな」 高らかで愉快そうな声が割り込んできてカインはぎくりとする。振り返ると、半分開いた扉の枠に凭れかかった男が、灰色の瞳をカインへ向けていた。 年齢はカインよりも少し若そうだが、その態度は上司であるはずのウィルよりも偉そうだ。 ダークブロンドの髪を無造作に伸ばしており、Tシャツにジーンズを身に着け、挙句の果てに左手にはアイスクリームを持っている。 管理職室に不釣り合いなのはおろか、関係者にも見えない。
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