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「暴走」は、この部署で一番多い事例だ。 世界に異能が発生して数十年が経っているが、いまだにその発現については解明されていない部分が多い。というかほとんどだ。 異能力は生まれたときから能力が携わっている先天的なものと、後天的に表れるパターンがある。その発生条件も不明。本人の自覚もないため、昨日まで非能力者だった一般人が突如として能力者にすり替わる。 だが突如として現れる場合でもたいていの場合、その力は微弱なものだ。自覚症状がない場合でも健康診断や病院の検査で発覚することもある。はっきりとした線引きがあるわけではないが、能力の効力の強弱から、便宜上大きく三つのレベルに分類されている。 暴走は、前触れもなく能力者の能力レベル以上の力が発動し、本人にそのコントロールができなくなる状態を指す。当然、能力者が意図的に能力を振るっている場合はこれに当てはまらないが。それはまた別の管轄だ。 「それでお前はどれくらいやれるんだ?」 上から目線な問い掛けにカインはムッとした。 「現場経験はあるのか」 「四年」 「それは捜査官になってからだろ、暴走の対処はどれくらいになる?」 ロイたちのチームと違い、カインが一週間前までいたチームは暴走の対処に特化していたわけではない。 他チームのバックアップメンバーという形で、人員不足の班に駆り出されていた。 いわゆる何でも屋だ。 能力を利用した軽犯罪から殺人が絡む重犯罪までさまざま。もちろん暴走にも対応している。 「何度も対処してる。そっち並みにはやれると思うぞ、少なくとも」 皮肉たっぷりに言ってやるが鼻で笑われた。 「いうじゃねえか。ちょうどいい、小手調べと行こうか」 言い返す間も与えず、ロイは背を向けながら一方的に続ける。 「俺は避難誘導するから、対象を止めてこい」 背中越しにひらひらと手を振る。カインは行き場のない苛立ちをため息に変えて吐き出すと、切り替えて目の前の対象に意識を戻した。 あいつがムカつくということは一旦置いておいて、まずは仕事が優先だ。 カインは芝生の上に立つと大声を上げた。 「パーカーさん」 呼びかけに応じるように、彼の目がカインを捉える。
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