時よ止まれ。

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病院から見える景色は相も変わらずで退屈な日々、ただ時間だけがすぎていく。 葉が一枚一枚落ちていく様子を目でおい、命の儚さを感じる。 周りではよつばばあちゃんとおばさま方の話し声が聞こえる。 それをナースの人が呆れ笑いを浮かべながら見つめていた。 ベッドに横になるよつばばあちゃんは私と目が合うとにこりと微笑み話しかけてきた。 「しゃーちゃん。また本読んでるのかい。お友達は?来ないのかい?」 しゃーちゃん。小さい頃自分の名前が言えなくて。ずっとしゃーちゃん。そう呼んでいた名残でそのあだ名になってしまった。 「ええ、また来ると思いますよ。」 そう笑顔で返しまた本に目を落とそうとした。 「そうなのかい。そうなのかい。ほれ。佐々木さん。しゃーちゃんにこれを。」 そういい何かを手渡し歩けないよつばばあちゃんのために佐々木さんが私の元へ来た。 「はいはい。いつものキャラメルね。」 笑いながらそう言うと隣に置いてある花瓶の横にキャラメルを2つ置いた。 「いつもありがとうございます。」 「しゃーちゃんはほんとにキャラメルが好きだもんねぇ。ばあちゃんなんでも知ってるからね。」 よつばばあちゃんは本当になんでも知っていた。私が落ち込んでる時も嬉しいくて喜んでいる時もいつもこのキャラメルをくれた。そしてあの暖かい手で私の頭を撫で回す。 ガラガラ。鈍いドアの音が響き渡った。 みんな一斉にドアの方へと目をやる。 そこには1人の少年がたっていた。 背が高く細身で髪はボサボサ。眼鏡をかけたいかにもダメ男のような男がたっていた。 「工藤くん!」 よつばばあちゃんは私が名前を呼ぶより早く呼んだ。 「工藤くん?」 おば様が首をかしげる 「ほら、しゃーちゃんのボーイフレンド!」 「ち!違います!」 工藤くんと私の声が被る。それにくすくすと笑うおばさま方。 「ほーら。邪魔になったら行けないから。あとは若い2人でどーぞ」 冷やかされながらも工藤くんはゆっくりとこちらへ来る 「宿題は?できた?分からないとことかあるなら教えるけど」 「うん。大体は。ここ参考書見たけど分からなくて、」 2人の距離は日に日に近くなっていく。 決して恋愛なんて甘い気持ちはない。 でも学校に行けない私にとっては工藤くんが学校の唯一の友達。 毎日病院に来てくれて勉強を教えてくれる。 そして使わないからって参考書までくれた。 本当に頭が良くてテストだって作ってくれて。宿題持ってきてくれて先生に提出してくれる、 心まで綺麗な少年だ 丁寧な教え方でわかるまで教えてくれる。 「こんな説明でわかったかな?」 「うん!丁寧だし先生より分かりやすいかも」 「ええ!そんなに?お世辞でもうれしいよ。」 工藤くんは将来先生になるのが夢。絶対叶う。そう確信している。 クラスの様子や、学校で起きた面白い話など沢山聞かせてくれて楽しすぎて時間があっという間。 看護師の方がノックしに来た 「すいません。面会時間終了になりました。」 「あ、いつもすいません。」 わざわざ立ち上がりかり挨拶をする。 「じゃあ、また明日。」 「うん。ありがとう」 手を振り微笑み出ていく彼の背中をただ見つめていた。 おばさま方はそんな私たちを見てニヤニヤしていた。 「青春だねぇ。」 「いつ結婚するんだい?」 「孫は!孫ー!」 わいわいはしゃぐおば様。それに微笑む。 「そんなんじゃないですよ。」 ほんとに。そんなんじゃ、ね。
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