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第5章
──宇宙の声が「森」へと伝えられて──
オレが、小学校を卒業するまで住んでいた東北地方太平洋沿岸の小さな農村の、国鉄官舎のすぐ裏には、樹々が濃密に茂る「森」があった。
朝陽が「森」を包み、白い靄がかかった「森」では、朝を迎えた小鳥たちのさまざまなさえずりが響き、風に揺れる樹々がざーと音を立てていた。
「森」の中心にある樹々の樹冠からは、白く丸い太陽の輪が、皆既日食のダイヤモンドリングの瞬きのような光の帯を、あたりを覆う雑草にまで届けていた。
まだ幼いオレは、この「森」が樹々の梢をアンテナとして宇宙と交信をし、宇宙の声が「森」へ伝へられていると感じていた。そしてこの「森」から飛び立った鳥たちが、この地球の他のさまざまな森へその意思を伝へているのだと。
そして今オレは、いつの日か、この「森」を中心として、くもりのない世界を脅かすものたちとの戦いがはじまるだろうと思っている。
その戦いには、愛犬シーズーのシーを中心に動物や鳥や昆虫たちが集うとともに、何人かの儚い運命を背負った人間の子どもたち ──もちろんセラピー犬に励まされているあの難病の幼女も── も参戦し、力を合わせて戦うだろうとも……
さらにそれら人間の子ども中に、ひとりの黒人のような縮れた短い髪に異様に大きく発達したひたいの少女がいて、その容姿からは想像もできないような儚くもかなしく美しい声で歌いはじめると、有象無象の輩で汚れてしまったこの世界が、清浄な空気に満たされて行くであろうことも……
ラーララララー
ラーララララー
ラーララララーララー
ラーララララー
ラーララララー
ラーララララーララー
やがてその歌声を「森」の樹々が共鳴し、地球のさまざまな森へと伝たわって行く。
すべてを清浄な地へと導くように……
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