第6章

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第6章

 ──初夏のあたたかな太陽の日差しの中で──  その日の午前中も、初夏のあたたかな日差しが病室へ注ぎ、白いシーツがやわらかくあたためられ、スズメたちの無邪気なさえずりも聴こえていた。  母親が仕事のため、今日もひとりで寝ていた幼女も、心なしか気持ち良さそうだった。母親がいない平日は、看護師さんが入れ替わり立ち替わり様子を見に来たが、幼女はやはりセラピー犬の白いゴールデンレトリバーが来るのを心待ちにしていた。  すでに幼女にとっては、なくてはならない存在になっている。  ようやくセラピー犬のゴールデンレトリバーがやって来ると、幼女はとても嬉しそうに小さな手足をさかんに動かしはじめた。  そしてやわらかな陽が差し込むベットに、セラピー犬が長い顔を乗せて幼女を見つめると、幼女はその小さな手をセラピー犬の方へ伸ばしながら、生まれてはじめてにっこりと笑顔を浮かべた。声は発しないものの、丸い頬の顔には喜びに満ちた笑顔がみられる。  看護師さんたちから、──笑った、笑った、奇跡よ、奇跡よ! という歓声が上がり、セラピー犬は幼女の笑顔に応えて、彼女の小さな手を何度も何度も舐めつづけた……
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