序章

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序章

 ──小宇宙=8畳の和室から新生の方途(ほうと)へ──  スタンドライトの卵型のLED電球は、まるでこの8畳の和室の小さな太陽のように、隅々にまで淡くあたたかなひかりを放っていた。ほんものの太陽が、地球のすべての生命の源なら、この部屋の小さな太陽は、オレと愛犬シーズーのシーのかすかないのちのともしびだろう。  オレとシーにとっての小宇宙=8畳の和室。  それは雨も降らず、風もないほのかな(あか)りに(はぐく)まれたオレとシーのイーハトーブ。  体毛をススキの穂のように(きら)めかせ、シーがそのつぶらなひとみでじっとオレを見つめる。オレもシーを見つめると、オレの脳の下垂体(かすいたい)からオキシトシンが分泌され、シーの脳からもオキシトシンが分泌される。やがてそれは、種を越えた互いの愛情、(きずな)を永遠なものへと導く。  そして、そのつぶらなひとみの先にあるものは、くもりのないまことの世界。  シーは、じっと宇宙の彼方を見つめる……  本当に暗い、暗い《内部の地獄》をもち、それにけんめいに耐えようとしている者のみが、《新生の方途》について語りえる。  そして今、くもりのない世界を脅かすものとの戦いが始まろうとしていた。 e7c5dec1-1a8e-48b3-bf92-cb393250ec3d
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