11月の掌編集

願う

　旅立つあなたへ、心ばかりのはなむけを。
　長い長い旅の共に、日保ちのする乾燥食材を。今後まともに話すことのできる相手と巡り会えないかもしれないから、会話相手になる、丈夫な植物を。この星で、あなたが好きだと言った花の香りも、私と口ずさんだあの歌も、もう二度と見られないかもしれない海のきらめき、ざわめき、そのにおいを。水も、たっぷり持ってお行き。
　そしてどうか、忘れないで。
　ここに、こんな星があったということを。やがて滅びるこの星の上に、僅かの間、呼吸をしていた生命（いのち）があったということを。
　私が、いたということを。

ノベルバー「はなむけ」
※これでノベルバーは完走です！　あとnovelmber 数題があります。