1人が本棚に入れています
本棚に追加
【1時限目 FBI式捜査方法を学ぶ】
盾改先生「日本では毎年、どれぐらいの人数、行方不明者が出ていると思う?」
今は、一時限目で【FBI式捜査方法】の授業が行われている。
大広間の食堂で、朝食を食べ終えた生徒たちは、【犯罪捜査資料室】と言われる大量の事件資料が
倉庫に保管されている教室にやってきた。
事件資料は、学校が警察や他の捜査機関から取り寄せたものであり、学校の図書室や倉庫にも大量に収納されている。
もちろん、それらの資料は授業のために先生方が使うものであり、生徒たちに勝手に見られないよう
暗証番号や最新鋭の防犯システムで保管されている。
有名な【地下鉄ボツリヌス毒事件】【大手製菓会社・エバコ森里事件】【世田山一家殺害事件】
【北朝鮮拉致被害者に関する個人情報ファイル】
などなど・・・・
未解決となったままの事件資料も数多く保存されている・・・・
その中には、国家が最高重要機密としてきた事案も・・・・・
生徒たちが見ることができる資料もあるが、大抵は許可されない恐ろしい代物ばかりだ。
今回の授業は、元FBIの特別捜査官であり、内閣情報調査室でケースオフィサーもやっていた
異色の経歴を持つ【盾改北斗】先生が、行方不明者の捜索方法を講義している。
サングラスにスーツという出で立ちのダンディな紳士先生だ。
お、今の先生の質問に対してチラホラと手が上がっているぞ・・・・
盾改先生「よし、ではリリ、答えてみて」
先生が指を差して当てたのは、学校でも常に成績トップで勝ち気な性格の小野田リリカ・・・
カナダ人の母と日本人で官僚の父を持つ、お嬢様生徒だ。
みんなからは、リリと呼ばれている。
リリ「平成29年の警察庁の発表によると、毎年約8万人以上の行方不明者届出が警察に提出されているのが現状です。」
盾改先生「うん、じゃあ その中で、実際に見つからず現在まで行方不明な方は何人いる?」
リリ「約1万人です。」
盾改先生「その通りだ。よく勉強してるな・・・座ってよろしい。その中には【特定失踪者】・・・いわゆる北朝鮮による拉致などで国外に連れ去れられ、戻ってこれない状況の方が277名もいるという・・・
国によって正式に認められた特定失踪者は17人となっているが、本当はもっと多くの方が外国の悪意の手によって人生を壊されているということだ。君たちにはゆくゆくそのように犯罪や陰謀によって苦しんでいる方々を助け、悪を潰す・・・・いや、そもそも犯罪を起こさせない強い日本を作る人材になってもらわなければならない・・・・」
生徒たち「はい!」
生徒たちが一斉に口を揃えて、返事をする。
まだ、12,13歳だというのに皆、何か大きな使命を抱えて生きている大人の顔つきだ。
盾改先生「殺人事件を始めとするあらゆる犯罪捜査でも初動捜査が一番大事なように、行方不明者の捜索も、始めの2、3時間が肝心だ。残酷な真実を言うが、あるデータによるとこの2、3時間で有力情報を
集めることができなければ発見率は40%ほど低くなる。つまりそれだけ発見できなくなるということだ・・・今君たちのタブレットに【FBI式 行方不明者捜索の基本的な鉄則】が書かれたファイルを送った。」
生徒たちは、タブレットを開き盾改先生が送ったファイルを開く。
行方不明者捜索の基本3つ。
・情報はとにかく集められるだけ、集めよ。
・収集した情報の正確性の照合はすぐにしろ。
・危険性のある場所の捜索には絶対に1人では行くな。捜索は3人以上が基本。
盾改先生「日本最大の行方不明事件と呼ばれた2000年から約10年に渡って起こった【北関東連続幼児誘拐失踪事件】もFBIの捜査官から言わせれば、この基本的な鉄則を守っていなかったから、ろくな情報が集まらず、同一犯の可能性も見落とし、現在に至るまで犯人も見つけられず、誘拐された【納山ひかる】ちゃんも行方不明のまま未解決なのだ・・・・・・
こんなことを言うのは、不謹慎だろうが・・・・行方不明の女の子がもし生きていればちょうど君たちと
同じ年だろうな・・・・・・
日本の警察・司法の深い闇の事件だ・・・・・」
盾改先生は、そう言ってうつむく・・・・・
この物語の主人公で、このNPSS校の生徒である【小島友愛】は先生の話を聞きながら思った・・・・・
「たった、一度の誰かの悪意で人生はめちゃくちゃになる・・・その悪意の矛先は年齢も性別も関係ない。
いつだって僕らの前に姿を現すかもしれない・・・だから僕らは自分の身は自分で守らなくてはならないんだ。」
と・・・・・・
生徒たちの鮮やかな青の制服が、窓から降る太陽の光で照らされる・・・・
まだ、学校生活は始まったばかりだ・・・・・
盾改先生「よし、じゃあ基本的な心構えがわかったところで、次は実際に起こった事件をもとに君たちに事件の考察や犯人像を割り出してもらう。」
盾改先生の授業では、このように実際にあった過去の事件をもとに犯罪捜査学を学ぶ。
先生がFBIで培った実践的な捜査方法は、ただただ感心させられるばかりだ。
たまに、生徒たちに肌で過去の事件を体験させるために、校外学習として実際に事件現場に行かせたり
過去の資料や事件当時の映像を見て、犯人像や事件概要の割り出しも生徒たちに自らやらせるんだ。
だかた結構、【過去の事件を考察する】授業が多いね。
いわば、本物の捜査官になるための勉強だね。
盾改先生「大事なのは、1つの仮説だけに固執せず色んなパターンを考えること。そしてその事件の【犯人の気持ちになること】が何より重要です。どうすれば証拠を隠せるかな?どうすれば完全犯罪が成立するかな~と【想像を大事】にしてください。」
盾改先生の興味深い授業は、また今度・・・・
またどこかで実践的な捜査方法や過去事件の考察を見学しに行こう。
まあ、このNPSS校に入学すれば、いつでも先生と過去の事件について語り合えるんだけど・・・・
次回 は 【CIA式諜報学の授業】
最初のコメントを投稿しよう!